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第1話

非日常の始まり
3,764
2019/06/04 06:43
 じりじりと夏でもないのに太陽は私の肌を焼く。ここの所気温がとても高く、アイスを食べたりと冷たいものを探すようになっていた。
貴方
貴方
それにしても暑い……こんな暑さなら外に出ようなんて考えるんじゃなかった…
 外に出た理由は他でもない、あまり人気がなく木々に囲まれて空気の澄んでいる"いつもの場所"に行けば少しは暑さがマシになると思ったからだ。

あそこなら近くに川もあるし遊んでも咎める人はいないだろうと足早に向かった。

しかし、そこに着くと少し、いやかなりの大きさのダンボールが置いてあった。

ここに来る人はほとんどいないと思っていたが、それをいいことに犬や猫を置き去りにしているのではないか、と考える。
貴方
貴方
は?なんでここにダンボールがあるの、
とりあえず中を見ないことにはどうすればいいか分からないし…
 確認のためにダンボールの中を覗くと私は目を見張った。

なぜなら、やれ犬だ猫だと思っていたダンボールの中にいたのは6人の子供だったからだ。

いつからここに置かれていたのかはわからないがこの暑い気温だ。いくらこの場所が木陰になっていて涼しくても脱水症状などが出ていてもおかしくはない。

私は彼らを起こすために呼びかけた。
貴方
貴方
ねぇ、僕たち。ちょっといいかな?
 声をかけると各々が目を開きこちらを不思議そうな目で見てくる。

しかし意識がはっきりしてくると次第に警戒の目を見せてきた。
貴方
貴方
 あー、ごめんよ?私は夏目 あなた。ここによく来るんだ。僕達はどうしてこんなとこにいたの?
 そう言うと気だるげで青い服を着た男の子が答えてくれた。
一ノ瀬 宙
一ノ瀬 宙
ん…しらない。おきたらここにいた
貴方
貴方
そっかァ、それならもし良かったらお姉ちゃんのおうちにおいで?ここじゃ何も出来ないしお腹とか空いてるでしょう?
そう聞くとぐぅ、とどこからともなく小さく可愛らしい主張が聞こえてきた。
相川 真冬
相川 真冬
あ、ぅ………
坂田 悠
坂田 悠
おなかすいたー!
浦田 渉
浦田 渉
…じゃあおねがいします
貴方
貴方
ふふ、わかった。じゃあダンボールから出すから一人一人持ち上げるよー、ごめんね
 なるべくゆっくりと持ち上げてダンボールから出していく。それにしても軽い。大丈夫だろうか。

全員だし終わるとむらさきの服を着た子と黄色い服を着た子が手を繋いできた。
黒木 志麻
黒木 志麻
へへっ、オネーサン、てぇつなご!
羅津 千紘
羅津 千紘
じゃあはんたいがわはせんらがつなぎます!
 いきなりのことに少しびっくりしたが、警戒を解いてくれたようで嬉しかった。

帰る途中、自己紹介を聞きながら歩いていると、駄菓子屋さんに着いた。水分補給などをした方がいいかと寄ることにすると、さすがに暑かったらしい、アイス売り場に駆け込んでいった
貴方
貴方
おばあちゃん、おはよう。今日も暑いね〜
駄菓子屋のおばあちゃん
駄菓子屋のおばあちゃん
あら(名前)ちゃん、おはよう。その子たちは親戚の子かい?
貴方
貴方
ううん。そこの森にいたから拾ってきた。家族は見当たらなかったしダンボールの中にいたからうちで引き取ろうかと思ってね。
駄菓子屋のおばあちゃん
駄菓子屋のおばあちゃん
そうかい。大変だねぇ。アイスは私からのサービスにしとくよ。なんかあったら遠慮なく言いに来なねぇ
貴方
貴方
アイスありがとう。分からないことあったら聞きに来るね。
坂田 悠
坂田 悠
おばあちゃん!これちょーだい!
駄菓子屋のおばあちゃん
駄菓子屋のおばあちゃん
はいはい。元気だねぇ。お姉ちゃんの言うことちゃあんと聞いていい子にするんだよ
 はぁいと片手を上げながら返事をする彼らを見ておばあちゃんと私は顔を見合わせて笑った。
 家に着くと、歩いてきて疲れたのか皆ぺたぁと座り込んだ。

とりあえずリビングに連れていきベッドの上だったりクッションの上だったりに座らせる
貴方
貴方
んーと、誰か覚えてることとかないかな?
そう言うと彼らは顔を見合わせた後、首を横に振るが宙君は手をポケットに突っ込んでメモを取り出した
貴方
貴方
…なになに?
身勝手で誠に申し訳ございませんが、この子達を少しの間お願いします。
彼らは元は成人済でした。しかし自称神と名乗る変質者から変なスプレーを浴びせられて身体も記憶も幼児化してしまいました。
私ではどうすることも出来ないのであなたに託します。


P.S.彼らは愛を感じると徐々に戻っていくそうです。
貴方
貴方
って、物凄く大変じゃないですか!
そう言うと彼らはまだよく分からないのだろう。子犬のような目でこちらを見てきた。心做しか涙目にも見える
相川 真冬
相川 真冬
おねーたんも、まふゆたちをおいてくの?
貴方
貴方
そんなことはしないよ。ちゃんとこのおうちに居ていいよ
 そう言って頭を撫でればふにゃふにゃと笑った。とても可愛い。

何はともあれ、事情が事情な為野放しにすることも出来ない。この家でできることをしよう
貴方
貴方
ふふ、これからよろしくね。皆
 その言葉に彼らも笑い返してくれた。

しかし、私は気付いていなかった。彼らの目が妖しく光り輝いていたことに。

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