嫌がらせが始まってから一ヶ月。
私は、毎日、不安と恐怖に苛まれながら学校に通っていた。
(もう、どうしたらいいんだろう…)
私は、心が疲れ果てていた。
そんな時だった。
放課後、一人で下駄箱に向かっていると背後から声をかけられた。
「…あれ? 水瀬彩桜?」
その声の主は、嫌がらせの常習犯、朱音ちゃんだった。
朱音ちゃんの周りには、いつもの取り巻き達がいた。
取り巻き達は、彩桜を見てくすくすと笑っていた。
「あんた、まだ、学校辞めてないんだ」
朱音ちゃんは、嘲笑うようにそう言った。
「目障りだから辞めてくんない?」
朱音ちゃんの言葉に私は、何も言い返せなかった。
「…黙ってないで、喋れよ!」
朱音ちゃんは、そう言うと突然、彩桜に近づき手に持っていたバケツの水を私にかけた。
冷たい水が私の全身を濡らした。
「あんた、駿くんと朔くんにこれ以上、近づくんじゃないわよ!」
朱音ちゃんは、そう言い残し取り巻き達とその場を立ち去った。
私は、びしょ濡れのまま、立ち尽くしていた。
(…怖かった…)
体が震え、涙が溢れてきた。
(早く着替えなくちゃ…)
私は、急いで保健室に向かうことにした。
保健室でタオルを借りて体を拭こう。
そう思い、濡れたまま、廊下を歩いているとすれ違う生徒たちが私を見てヒソヒソと噂話をしていた。
その時だった。
聞き慣れた声が私を呼んだ。
振り返るとそこに立っていたのは、黒瀬くんと吉川くんだった。
二人は、私の姿を見て驚いた表情を浮かべていた。
吉川くんは、激しい怒りを露わにした。
私は、震える声でそう言った。
しかし、嘘をついていることは、すぐにバレてしまうだろう。
急に寒気がしてきた。
私は、くしゃみをした。
黒瀬くんは、自分のブレザーを脱ぎ私にかけた。
私は、震える声でお礼を言った。
吉川くんは、今にも怒りが爆発しそうだった。
吉川くんは、低い声でそう呟いた。
黒瀬くんも頷いた。
二人は、誰のことを話しているのだろうか。
私には、すぐに分かった。
吉川くんは、そう言い放った。
私は、大きな声で叫んでしまった。
黒瀬くんは、優しい声で私に話しかけた。
黒瀬くんの言葉を聞いた瞬間、私の中で何かがプツンと切れた。
今までずっと我慢してきた感情が一気に溢れ出した。
ポロポロと大粒の涙が私の頬を伝った。
私は、震える声でそう呟いた。
黒瀬くんは、そう言うとニッコリと微笑んだ。
その笑顔は、普段の優しい笑顔とは違いどこか冷たく恐ろしい雰囲気を漂わせていた。
吉川くんもニヤリと笑った。
二人は、彩桜を庇うように立ち上がった。
そして、誰もいない教室に朱音ちゃんと取り巻き達を呼び出した。
「ねえ、駿くん、用って何?」
朱音ちゃんは、嬉しそうな顔をして教室に入ってきた。
まだ、何も知らない。
黒瀬くんと吉川くんが自分たちを呼び出した理由を全く理解していない。
吉川くんは、イライラした口調でそう言った。
「イヤだわ、あの子が目障りだから」
朱音ちゃんは、悪びれる様子もなくそう答えた。
吉川くんは、ついにキレた。
その顔は、鬼のように恐ろしかった。
黒瀬くんは、淡々とした口調でそう言った。
黒瀬くんの言葉を聞いた瞬間、朱音ちゃんと取り巻き達は、顔面蒼白になった。
自分たちがしてきたことが全てバレていたのだ。
そして、退学という重い処分が下されることを知った。
朱音ちゃんと取り巻き達は、泣きながら教室を飛び出していった。
教室には、黒瀬くん、吉川くん、そして私の3人だけが残された。
私は、二人の行動に、ただただ、呆然としていた。
(…黒瀬くんと吉川くんは、私のためにこんなにも…)
私は、胸が熱くなるのを感じた。
(それにさっき黒瀬くんと吉川くんは、私のことを『好きな人』って言った…)
私は、その言葉を思い出し、顔を赤らめた。
(2人とも… 私のことが好きなの…?)
私は、ドキドキしながら黒瀬くんと吉川くんの顔を見つめた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!