体育祭が終わり平穏な日常が戻ってくることを願っていた私。
しかし、現実は、そう甘くはなかった。
次の日からまた、嫌がらせが始まったのだ。
教科書が破られていたり、机の中にゴミが入れられていたり、陰口を叩かれたり。
私は、心が折れそうになりながらも毎日、学校に通っていた。
(もう、どうしたらいいんだろう…)
私は、途方に暮れていた。
そんな時、瑠奈ちゃんが深刻な表情で私に近づいてきた。
瑠奈ちゃんの言葉に私は、息を呑んだ。
瑠奈ちゃんは、小声でそう言った。
その女子生徒の名前は、朱音ちゃんというらしい。
私は、首を傾げた。
朱音ちゃんのことは、名前くらいしか知らなかった。
瑠奈ちゃんは、続けた。
その女子生徒は、朱音ちゃんが取り巻きの女子生徒たちと私に対する悪口を言っているのを聞いてしまったらしい。
さらにその会話をこっそりと録音していたという。
瑠奈ちゃんは、スマホを取り出し、録音データを再生した。
「あいつさマジ、ウザくない?」
朱音ちゃんの声がスマホから流れてきた。
「あ、水瀬のこと?」
取り巻きの女子生徒の声が聞こえる。
「そうそう。黒瀬くんと吉川くんにチヤホヤされてさ! 付き合ってないのに付きまとうなよな! うっざい」
「それな! みんなの駿くんと朔くんなのに!」
取り巻きの女子生徒たちが同意する。
「昨日の画鋲は、傑作やったわ」
朱音ちゃんの声が再び、聞こえてきた。
「だよね!」
取り巻きの女子生徒たちが笑う。
「…次は、何して嫌がらせしてあげようかな?」
朱音ちゃんの声がケラケラと笑った。
録音データが終わると瑠奈ちゃんは、スマホをしまった。
私は、信じられない気持ちで、いっぱいだった。
まさか、同じ学園内の生徒が自分にこんなにも悪意を抱いているなんて思ってもみなかった。
瑠奈ちゃんは、心配そうな顔で私に問いかけた。
私は、悩んだ。
(黒瀬くんと吉川くんに伝えたらきっと朱音ちゃんに何かするだろうな…)
(でも…二人に心配かけたくないし…)
私は、どうすればいいのか分からなかった。
私は、そう決意した。
(これでいいんだ)
自分に言い聞かせるようにそう思った。
黒瀬くんと吉川くんに朱音ちゃんのことを伝えたらきっと二人は、朱音ちゃんに何らかの報復をするだろう。
しかし、そうなれば、朱音ちゃんだけでなく黒瀬くんと吉川くんも傷ついてしまうかもしれない。
(…二人にそんな思いをさせたくない…)
私は、そう思った。
(…二人に被害が及ぶくらいなら私が我慢すればいい…)
私は、自分を犠牲にすることを選んだ。
瑠奈ちゃんは、心配そうな顔で私を見つめていた。
私は、瑠奈ちゃんに笑顔を見せた。
そう言い聞かせて私は、教室に戻った。
瑠奈ちゃんside
彩桜ちゃん…このままじゃあ、危ないよね。
彩桜ちゃんのことを放っておけない。
何かできることはないだろうか。
(そうだ…!)
彩桜ちゃんにバレないように黒瀬くんに連絡しよう。
瑠奈ちゃんは、スマホを取り出し、黒瀬くんに電話をかけた。
黒瀬くんの声が聞こえる。
瑠奈ちゃんは、小声でそう伝えた。
黒瀬くんは、冷静な声でそう答えた。
瑠奈ちゃんは、念を押した。
黒瀬くんが不思議そうに問い返してきた。
瑠奈ちゃんは、説明した。
黒瀬くんは、納得したようにそう言った。
瑠奈ちゃんは、黒瀬くんとの電話を終え、スマホを握りしめた。
(黒瀬くん、吉川くん、どうか、彩桜ちゃんを守ってあげて…)
瑠奈ちゃんは、心の中でそう願った。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。