第3話

喧騒
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2022/11/09 11:00
周
わー! これかわいいー!
つかさ好きそう!
司
ほんとだ。宮ちゃん良いセンスしてる。
セッチこれ取れなーい?
成也
成也
金出せ
司
えーなんで?
おごってくれてもいいじゃーん
周
あ! あれもかわいい!
葵衣
葵衣
…………
なんで……
なんで俺はここにいるんだ……。
がやがやざわざわ騒がしいところはあまり好きじゃない。
明るすぎる光は目が痛くなるし、
そんな主張すんなよって言いたくなるくらい
大音量で流れる音たちで耳が痛い。

それなのに、俺は今、ゲームセンターにいる。
葵衣
葵衣
(早く帰ろうと思ってたのに……
なんで放課後までこいつらと……)
最近、校内ではしょっちゅう村宮に
引っ付かれて心休まる暇がない。
同じクラスだから日中は半ば諦めているものの、
せめて放課後は死守しなくては、
と毎日下校時刻になるたび
速攻で教室を出ていたが……
今日は失敗した。
珍しく教科書をしまうのにもたついていたら、
あっというまにやってきた村宮が笑顔で俺の腕を掴み、
問答無用でゲームセンターに連行して今に至る。

ついでに当たり前のような顔をした和田と三浦もいる。
何だここ……地獄か……。
司
あれ、アイアイってば遠い目してどうしたの?
もしかしてゲームセンター怖い?
葵衣
葵衣
は……?
もし怖いって言ったら帰してくれんの?
司
怖くないよって慰めてあげる
葵衣
葵衣
くそが……
周
あおいー!
これで勝負しよー!
ぶんぶん手を振ってくる村宮の目の前に
あるゲーム機を見て、俺は思わず顔をしかめた。
色とりどりの光を放つソレからは、
リズミカルな音楽が流れている。
葵衣
葵衣
いや……やんねぇ……
司
あれあれ~? 負けるのが怖いの?
司
宮ちゃーん、アイアイびびって……
葵衣
葵衣
やってやんよオラ! 金出せ!
周
やったー! 早くやろー!
司
わぁ、チンピラもびっくりなカツアゲだ
成也
成也
……










葵衣
葵衣
もうぜってぇやんねぇ……
まんまと和田の挑発に乗った結果、勝負は散々だった。
いやわかってたさ……
俺のことは俺が一番よくわかってる……。

リズムゲームが俺の敵だということは
前々からわかっていた……。
音痴おんち』って言われる俺が
リズムゲーム得意なわけねぇだろ!

負けず嫌いな性格のせいで、
しなくてもいい勝負をしてしまった。
司
あは、いい顔
葵衣
葵衣
でめぇ、ぶちのめすぞ……
低くうなるような俺の暴言を、和田は笑顔で受け流した。
いら立つ自分を抑えようと辺りを見渡せば、
クレーンゲームに張り付いている村宮と、
それを見守っている三浦の姿があった。
どれを狙うのか決めかねているのか、
クレーンゲームのまわりを村宮は
落ち着きなくぐるぐる回っている。

何を話しているのかまでは聞き取れないが、
村宮の言葉にいちいち何かを返している三浦は、
意外と面倒見がいいのかもしれない。
葵衣
葵衣
無口で無愛想なくせして……
司
そう見える?
ふわ、と耳元に声と吐息がかかって、俺は飛び跳ねた。
葵衣
葵衣
うわ! 急に後ろに立つなよ!
司
えー? ずっといたじゃーん
さっきよりも全然ちけーじゃねーか!
ふざけんな! 急に声かけてきやがって!
司
セッチはね、別に
無口でも無愛想でもないんだよ
葵衣
葵衣
は? どう見てもそうじゃねぇか
司
あの子は関西弁を封じられると
語彙力ごいりょくがなくなっちゃうだけ
葵衣
葵衣
関西弁……?
確かに、三浦のイントネーションに少し違和感を覚えた。
そうか、あれは関西のイントネーションだったのか。
葵衣
葵衣
でもなんで関西弁封じられてんだよ
司
あ、気になっちゃう?
ボクらに興味出てきた?
葵衣
葵衣
うぜぇ……
司
このへんって転校生
来ることはほとんどないし、
関西弁ってだけで
からかってくる奴いるんだよね
司
普通に話してるだけなのに、
いちいちはやし立ててくるの
葵衣
葵衣
あー……
司
でもセッチは根っからの関西弁だから、
無理に標準語しゃべろうとすると
わかんなくなっちゃうんだって
司
だから、話したくても話せないって感じ
そうなのか……
標準語が分かんないから、黙るしかないのか。
三浦は三浦で、大変なのかもな……。

関西人の方がにぎやかなイメージあるし、
もしかしたら三浦の本性は……。

いや、想像できねぇ。
司
まぁ、関西弁で話してもあんま笑わないし、
無表情で感情分かりづらいから
誤解されやすいけどね
葵衣
葵衣
それを無愛想っていうんじゃねぇの……?
『別に無愛想じゃない』ってどの口が言ってんだよ。
関西弁封じられてなくても変わんねぇじゃねぇか。
司
わぁ、なんかにらまれてる?
葵衣
葵衣
お前と話すのなんか疲れる
司
え~? ボク結構話しやすいって評判だよ?
葵衣
葵衣
そんな社交辞令、鵜呑うのみにすんなよ
司
なに~?
ゲーム機の音がうるさくてきこえないや~
葵衣
葵衣
さっきまで普通に話してただろうが!
都合の悪い事だけ無視しやがって!
時間の無駄だ! 今すぐ帰りてぇ!
司
あ。あと宮ちゃんがあれだけ強引なのは
珍しいんだよ
葵衣
葵衣
は?
不意に和田がそう零した。
視線はいっさい俺に向けられることなく
村宮と三浦の二人に注がれたまま。
司
宮ちゃんってああ見えて
結構気遣い屋なの。知らない?
葵衣
葵衣
知らねーよ……
司
だから、こうして
アイアイのこと連れまわしてるのって
すっごい珍しいことなんだよ
和田の言葉に、俺は違和感しかなかった。
村宮が気遣い屋? 嘘だろ。
だって初日から「親友になろう」なんていう
頭おかしいやつだぞ。

俺が嫌だって言っても
お構いなしにグイグイ来るし……。
気遣い屋のきの字も見当たらねぇ。
司
ところで、もう一回さっきのゲームやらない?
司
アイアイがリズムに乗れずに
ジタバタしてる楽しい動画撮り忘れちゃった
葵衣
葵衣
死んでもやらねーよ

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