あなたside
何故か、行って欲しくなくて、寂しくて、つい渡辺先輩の腕を反射で掴んでしまった。
かわいい、可愛い、KAWAII…その言葉だけが脳内で独り歩きしてグルグル駆け巡る。
可愛い、って私が…?
渡辺先輩は踵を返すと、ベッド脇の椅子に座り込んで私の頭を軽く撫でた。
「適当に他の誰かに頼むから。」と付け加えて、すぐさま渡辺先輩はスマホを取り出した。
ここまで来ると、本当に申し訳なさで消えたくなってくる。
…まぁ消えたところで探し出される気がするけど。
コンコンガチャパッと閃いたかのように手を叩くラウールくん。…コロコロ表情が変わって同い年なのに可愛く見えてくる。
…渡辺先輩がさっき言った可愛いってこういう事なのかな。
そう言って顔を覗き込んでくるラウールくん。初めてこんなに間近で見たけど、やっぱりすごく顔が整っている。
恐るべしハーフ…。
ニッコニコで手を振るラウールくんに私も手を振り返した。
バタン普段から人に甘えるなんてした事の無い私が今更人に甘えるなんて…。
そう心では思っていても、それは渡辺先輩に伝わらない。
羞恥心がとんでもないけど、今は大人しく享受しておくしかない。
三十八度近くあると思うと、なんだか一気に体がだるくなってきた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。