あなたside
バシャッ絶対わざとだ。だってこんな何も無いところで転ぶわけがない。あからさますぎて逆に呆れる。
バケツの水かけられて、掃除全部任されて。
私ってなんて不憫なんだろうか。
あー、寒いな…。5月とは言え流石に水を被ると冷える。
とりあえず残りの掃除を手短に終わらせ、ジャージに着替えようと思ったが肝心のジャージが見つからない。あぁ、どこまで不憫なの。
今日は体育がないからと迂闊にジャージを自宅に置いてきてしまった自分に嫌気がさす。
途方に暮れていると、廊下から誰かに声をかけられた。
岩本先輩が笑ってるところ見るの初めてだな…。強そうな見た目と反対に屈託なく笑うのギャップがすごい。
軽く事情を説明すると、岩本先輩はうんうんと相槌を打ちながら聞いてくれた。
なんであの9人は揃いも揃ってこんなに気遣いができるんだろう。いや、だからモテるんだろうけど、私にも優しくしてくれるなんて。
駄々っ子のように頬をぷくっと膨らませる岩本先輩は、私が思っていたよりも可愛い人なのか、初めて会ったときよりも柔らかい雰囲気を纏っていた。
こんな強面で高身長なのに拗ねて「やだ。」とか言うんだ…。
確かにそれなりに私と岩本先輩とじゃ身長差があるため、予想以上にぶかぶかだ。
これはこれで包まれてるみたいで少し安心するけど。
チャンスって仲良くなるチャンスってことかな。確かに目黒くんや康二くん、意外と渡辺先輩がしょっちゅう私に絡んでくるような気はする。
そう思うと、岩本先輩と1体1で目を合わせて喋るのってこれが初めてかも。
康二くんが私の話を他の皆さんにもしてるなんて初耳だ…。
しかもどんな内容かが全く検討もつかないけど。
やっぱりあの9人って私が思っているよりも鋭いのでは。関わる度に誰かしらに心配されていては、この先バレるのも時間の問題だ。
承諾した途端、目尻が垂れるくらいへにゃあ、と笑う岩本先輩のその顔を見て安心した。また楽しみが1つ増えて嬉しいな。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。