「…ト、…ノト。ノト!」
私を呼ぶ声がしてハッと目が覚めた。
ミカさんが私を揺する手を止める。
「あ、起きた。おはよ。急いで着替えてね。朝ご飯は電車の中で食べるから。」
そう言ってミカさんはそそくさと部屋から出ていった。
私はクローゼットからいつもの服を取り出し、着替えた。
玄関に向かうと、既に準備を済ませたミカさんとハルくんがいた。
「あ、ノッちゃんおはよ〜。ほら早く行こうよ。」
そう言って手招きするハルくんに釣られて、私は急いで靴を履いて家を出た。
電車の中はすごく混んでいて、座る余裕も朝ご飯を食べる余裕も全く無かった。
〜次はBバスパーク前〜
自分達が降りる駅の名前がでてきて、私達は電車を降りた。
あの人混みは皆大会を見に来た人達のようで、駅はこれでもかと言うほどに混雑していた。
駅で食べようっていう話もあったけど、こんなに混んでいるため食べれる訳も無く、結局会場で食べることになった。
会場には大会のポスターがでかでかと貼ってあり、その中にレンさんがいた。
「やっぱりレンは凄いねー。」
ミカさんとハルくんがポスターを見あげていた。
突然着信音がなり、私は少し急いでナマコフォンを手に取った。
[あーもしもし?]
電話の相手はレンさんだ。
「レンさん?どうかしましたか?」
[会場にはもう着いたか?]
「はい!レンさんポスターに載ってました!カッコいいです!」
私は嬉しそうに言ったが、次の瞬間には恥ずかしさに襲われた。
カッコいい。
その言葉を本人に直接言うだなんて、と思ったからだ。
[そ、そうか…。ありがとな。]
電話越しでも、レンさんが照れているのがよく分かる。
[あ、大会の一次は不戦勝になった。]
思い出したかのようにレンさんはサラッと言った。
「え?不戦勝?どういうことですか?」
私が尋ねると、レンさんは少しきまり悪そうに話し始めた。
[それがな…。相手チームの武器が壊れてたんだよ。ただ使いすぎって訳でもなく、意図的に壊されてたみたいだ。犯人はまだ分かってないらしい。]
私はびっくりした。
びっくりしたあまり、言葉を失った。
しばらく考えたあと、私は一言だけ言った。
「許せないです。」
レンさんも私に同調するように言う。
[そうだよな。マジで許せない。あ、そろそろ始まるから切るな。]
「あ!レンさん!頑張って下さい!!」
そう言われて切られそうになり、私は少し慌てて言って自分から切ってしまった。
ナマコフォンを閉じると、ミカさんが話しかけてきた。
「誰からだったの?」
私は、さっきレンさんから聞いたことを全て話した。
「うわ、マジ…?……そのチーム、今どこにいるんだろ。」
ミカさんがそう言うから、少し不思議に思った。
「多分、まだ会場にいるんじゃ…。」
「よし、ノト。先に会場入ってて。ウチはハルと行かなきゃいけない所が出来た。」
そう言ってミカさんはハルくんの腕を掴んでどこかに行ってしまった。
この人混みの中でポツリと残されて少し慌てたが、とりあえず会場に入ることにした。










編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。