姫川は朝の会を終わらせ、社会の資料集と教科書、そして授業ノートをまとめ、6-2に急ぐ。生徒に5分前行動を強いている以上、自分もそうでなければいけない。
土屋は一ミクロも悪くないのだが、思わず1人心の中でごちてしまう。
と、笑いを堪えて近づいてくるのは、2組、理科担当の新田。何でも元陸上部だったらしく、背は姫川より頭一つ分ほど大きい。面倒くさがりで、ふざけているようだが、一番気配りができるのを、姫川は知っている。
月の瀬は運営委員会に所属しており、運営委員会は新田が担当なのだ。これはほぼ慣わしのようなものであり、運営委員は5年と6年の担任がするものなのである。
そういう経緯もあり、新田は月の瀬とやや親しい。
と、6-2生徒から冷やかされていることに気づき、姫川は慌てて告げる。
ガタガタガタッ。椅子の震える音。
ピッ、と空気が引き締まるような音。
弛緩しきった空気が張り詰めるこの瞬間が、姫川は一番好きだった。
ガタガタ。
甘い。甘い。暗記が甘すぎる。しかも人名だし。さらに宮本じゃなくて源だし。
一応優しい口調で告げるが、内心はブチギレていた。まさか、鎌倉幕府も覚えられないほどのバカばかりだったとは。1人くらい覚えておいても良さそうなものを。
復習をやらないでいいのは復習しないでも覚えられる奴なのだと言ってやりたい。できない奴は大人しく予習復習を欠かすなと。
だが小学生にそれを求めるのは酷だろうと思い直す。そもそも、最近の親はうるさい。そんな言葉を言おうものなら、たちまち学校にクレームの電話がかかってくるだろう。
思わず頭を抱えたくなるが、それも我慢だ。最近の親はうるさい(以下略)。
シーーーーーーン。
はぁ、とため息をつきたい。だが最近の親は(以下略)
これをもう2時間もするのか、と憂鬱になった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。