第4話

姫川視点
7
2025/10/04 15:06 更新
姫川は朝の会を終わらせ、社会の資料集と教科書、そして授業ノートをまとめ、6-2に急ぐ。生徒に5分前行動を強いている以上、自分もそうでなければいけない。
姫川先生
(………はぁ、1時間目、国語の宮沢賢治新聞、さっさと完成させたかったのに。あと何時間取れば終わるのかしら………)
土屋は一ミクロも悪くないのだが、思わず1人心の中でごちてしまう。
新田先生
……姫川先生。おかんむりですか?
と、笑いをこらえて近づいてくるのは、2組、理科担当の新田。何でも元陸上部だったらしく、背は姫川より頭一つ分ほど大きい。面倒くさがりで、ふざけているようだが、一番気配りができるのを、姫川は知っている。
姫川先生
………なんであなたがおかんむり、なんて言葉知ってるのよ。今時あの子たちのおばあちゃんおじいちゃんでも使わないでしょ
新田先生
いや、月の瀬さんに教えてもらいました。あの子、運営なんで
月の瀬は運営委員会に所属しており、運営委員会は新田が担当なのだ。これはほぼ慣わしのようなものであり、運営委員は5年と6年の担任がするものなのである。
そういう経緯もあり、新田は月の瀬とやや親しい。
姫川先生
あの子はまた死語古い言葉を………
新田先生
まぁ、あの子もなかなか博識ですからね。この辺一体の地理史なら俺らより詳しいと思いますよ
6-2生徒
ラブラブ!お熱いですねぇ!
と、6-2生徒から冷やかされていることに気づき、姫川は慌てて告げる。
姫川先生
はいっ、日直さん!号令!
日直
きりーつ
ガタガタガタッ。椅子の震える音。
日直
れーい
ピッ、と空気が引き締まるような音。

弛緩しかんしきった空気が張り詰めるこの瞬間が、姫川は一番好きだった。
日直
ちゃくせーき
ガタガタ。
姫川先生
はい、おはようございます。ええと、今日から室町時代の勉強をします。室町時代の前は何幕府でしたか?
6-2生徒
………ええと………あれでしょ?アレ。みやもとの………みたいなやつ
甘い。甘い。暗記が甘すぎる。しかも人名だし。さらに宮本じゃなくて源だし。
姫川先生
ええと、宮本は惜しいですね。室町幕府の前の幕府を開いたのは源 頼朝みなもとのよりともで、鎌倉に幕府が開かれたので、この幕府は鎌倉幕府と言います。重要なところなので、きちんと覚えておいてくださいね
一応優しい口調で告げるが、内心はブチギレていた。まさか、鎌倉幕府も覚えられないほどのバカばかりだったとは。1人くらい覚えておいても良さそうなものを。
復習をやらないでいいのは復習しないでも覚えられる奴なのだと言ってやりたい。できない奴は大人しく予習復習を欠かすなと。
だが小学生にそれを求めるのは酷だろうと思い直す。そもそも、最近の親はうるさい。そんな言葉を言おうものなら、たちまち学校にクレームの電話がかかってくるだろう。
姫川先生
(ーーーーーーーー新田先生に言っておかないと。予習復習は教科書を見る程度はしなさいって)
思わず頭を抱えたくなるが、それも我慢だ。最近の親はうるさい(以下略)。
姫川先生
それでは、鎌倉幕府で実権を握っていた役職とそれを独占していた氏は覚えていますか?これを覚えていないとテストは大惨事ですよ?
シーーーーーーン。
はぁ、とため息をつきたい。だが最近の親は(以下略)
これをもう2時間もするのか、と憂鬱になった。

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