第17話

第十六章
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2021/09/07 07:21
雨の日の下校中
第十六章
依
雨って嫌ですね
突然あいつが口を開いた
椿
椿
なんで?
依
濡れるからですよー
そんなことを言いつつ、私の傘の中に入ってきた
依
傘の中だと、雨の音しか聞こえなくて良いですね
椿
椿
確かに、今日は雨の音が強く感じる
沈黙が続いた
依
…椿、肩が濡れてますよ?
気がついたら私の肩が濡れていた
椿
椿
あ、ほんとだ
依
私のことはいいので、自分が濡れないようにしてください
そういうと、またあの笑顔で笑った
椿
椿
…いや、大丈夫
依
大丈夫じゃないです!
椿
椿
大丈夫
椿
椿
濡れるの慣れてるから
あいつは驚いた顔をしていた
依
そうですか…
椿
椿
うん
また沈黙が続いた
椿
椿
…君は、私と居て楽しいの?
依
楽しいですよ
依
すごく
椿
椿
そっ…か
依
遊園地に行った時も、こうやって話している時も、同じように楽しいですよ
そういえば遊園地に行った時もあったな
いろんなことがあるから忘れてしまう
段々と雨の音が弱くなってきた
依
雨、止みそうですね
椿
椿
そうだね
しばらく沈黙が続いて、雨が止んだ
傘を閉じると、青空が目に入った
依
うわぁ、綺麗ですね
今日の青空は一段と綺麗に見えた
椿
椿
うん
車が横を通り過ぎて行った
バシャアッ
依
うわっ!
あいつの服が濡れた
椿
椿
大丈夫?
依
あーもう…制服が…
椿
椿
ふふっ
タオルで拭いている姿を見ていると、可笑しくなった
あいつは不思議そうな顔で私を見た
椿
椿
…どうしたの?
依
………………
依
やっと笑いましたね
そうだ、今私笑ったんだ
椿
椿
依
これでようやく天国に帰ることができます
また雨が降ってほしい
そう思った

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