雨の日の下校中
第十六章
突然あいつが口を開いた
そんなことを言いつつ、私の傘の中に入ってきた
確かに、今日は雨の音が強く感じる
沈黙が続いた
…
気がついたら私の肩が濡れていた
そういうと、またあの笑顔で笑った
あいつは驚いた顔をしていた
また沈黙が続いた
…
そういえば遊園地に行った時もあったな
いろんなことがあるから忘れてしまう
段々と雨の音が弱くなってきた
しばらく沈黙が続いて、雨が止んだ
傘を閉じると、青空が目に入った
今日の青空は一段と綺麗に見えた
車が横を通り過ぎて行った
バシャアッ
あいつの服が濡れた
タオルで拭いている姿を見ていると、可笑しくなった
あいつは不思議そうな顔で私を見た
………………
そうだ、今私笑ったんだ
また雨が降ってほしい
そう思った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!