あーあ。下らないな。
学校に来たらこれかよ。
目の前にはチョークの粉が教室の入り口付近を舞っている。
心の中で毒を吐きながら目の前を睨み付ける。
何をってアンタだよ。
何でわからないかなぁ……
あ、やば。聞こえてた。
もうここまで来たら全部言っちゃおう。
私は挑発的な笑みをうかべた。
冷静を装っているが、きっと内心焦っている。
それに追い討ちをかけるように私は口を開いた。
その瞬間、教室にいる皆が息を飲んだのがわかった。
桧谷は今にもキレそうだった。
はぁ……
めんどくさいしこれくらいでいいか。
そう思い、教室を後にしようとする。
すると、突然桧谷が口を開いた。
香織……
ねぇ、香織……
どうしちゃったの?
なんでそんな悲しい顔するの?
嫌いならはっきり言ってよ。
香織……
やめてよ。
私をそんな目で見ないで。
なんでそんな哀れみの目を向けるの?
私がおかしくなっちゃう。
今まで香織と柳がいたからここまでやってこれたんだよ。
大嫌い……
興味ない……
香織は無表情で私にそう告げる。
そんなこと、嘘でも言わないで欲しかったな。
もう、嫌だ。
何もかも、嫌い。
こんな日はいつも続いている。
かれこれ2週間。
もう、慣れたよ。
そう偽ってでも呟かないと、もう限界。
香織の冷たさにも。
柳のいない苦しさにも。
もう、慣れたということにしておこう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!