暗い
何処までも沈んでしまいそうな、静かな闇
立っているような、浮いてるようにあいまいで
目を開けてるのか、閉じてるのかさえも——
ただ一つ
妙な“既視感”だけがある
ゆっくりと記憶を辿っていく
依頼が来て、皆で洞窟に行った事
敵が多くいた事も——
危なげなく終わったはずの戦闘
首元に手を滑らせる
発せられる声は掠れていて
喉は痛みを覚えた
こんな気持ちに——
その時——
ふと、声がした
最初は、聞き間違いかと思うほど
小さく遠くから
やがて、そんな音がいくつも重なっていく
聞いた事のない声も
聞き覚えがある声だって、あると思う
——でも
聞き覚えはあっても、誰の声なのかがはっきりと分からない
後ろから聞こえた気がして
急いで振り返っても誰も、何もない
今度は横の方から聞こえた
だが、そこにはやっぱり誰もいない
音だけが重なっていく
少しずつ
でも確実に
重なって、複雑に絡み合う
音が発してる言葉は理解できる
そして、聞いたことがあると思う…
でも
思い出せない
別の声がまた入ってくる
その声には、少しだけ焦りが混ざってるような気がした
先程より、小さく
遠い筈なのに
何故か近くに感じてしまう
——重い
一気に空気が重くなる
押しつぶされるような、胸の奥を掴まれるような
逃げたい、何処でもいいから
今すぐここを逃げたい
でも——
ドンドン混ざって
内容も聴き取れなくなる
それでも、音は俺の心を刺してくる
ポツリと一つの言葉が響く
それ以外の声と混じることなく一つだけ
問いかけても帰ってくることはない
そんな事、自分でも分かってる
けど
その声は今までの声の中で一番近くて
一番——
俺の知ってる限りで冷たい声
息が上がって、呼吸も浅くなる
何も言えない
何とも表せない苦しさを覚え
手を耳元にかざして目をつぶろうとする
その瞬間
声が……すべての音が消える
先程までの声も、自分の息遣いも
静寂に帰って消える
唯一の情報も消えて
本当に自分が曖昧になってしまう
何かを叫ぼうとしたその時
暗闇に
何処かから光が入る
その光は徐々に暗闇に広がり
白く染めていく
視界も白くなり始めたところで
視線の先に何かがいることに気づく
声が出る
そして、その声に反応したかのように
それは動いてこちらを向く
白くなっていく視界の中で
何かが喋ろうとしている
けど、顔も声も全く聞こえない
そして、暗闇が完全に剥がれ落ちかけたその時
言葉がはっきりと
だけど、優しく耳に届く
触れようと手を伸ばしても、届かず消えていく
そして、最後に見えたのは
完全に消えた暗闇と、こちらを見て微笑む誰かの姿だった












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。