最近の颯真には日課があった。
放課後、ランニングをすること。
どうして急に――そう思う者もいるだろう。
自分のためだけかと言われれば、それは少し違った。
めめの隣に立ったとき、少しでも胸を張っていられる自分でいたい。
そんな理由が、ないわけではなかった。
もともと運動が得意でも好きでもない颯真は、
最初こそ何をすればいいのか分からなかった。
だから相談した相手は、当然あの男だ。
流翔は一瞬、目を丸くした。
そして次の瞬間には、にやにやと口角を上げていた。
その一言が、今でも地味に癪に障っている。
だが、否定はしなかった。
否定できなかった。
だから今日も、颯真はランニングウェアに袖を通し、公園へ向かった。
夕暮れの空気はまだ少し冷たい。
いつもの公園。
軽く準備運動をしていると――
不意に、背後から柔らかな声がした。
振り返る。
そこにはリードに繋がれた白い猫と、茶色い猫。
そして、穏やかな笑みを浮かべた白茶さんが立っていた。
白丸と茶々丸。
――さあ皆さん、覚えているだろうか。
Episode25を皮切りに華々しく(?)登場し、
その後きれいさっぱり姿を消したあの二匹である。
「え、いたっけ?」と言われたら作者は少し泣く。
いや、正直に言おう。
出すタイミングを完全に逃していた。
忘れていたわけではない。断じてない。ここ重要。
ちゃんと構想メモには書いてあった。たぶん。いや書いてあったはずだ。
とにかく、そんなこんなで久々の再登場である。
あの後、二匹は白茶さんに引き取られ、毎日たくさん可愛がられ、
幸せに暮らしている。つまり安心してほしい。バッドエンドではない。
そして今日――満を持しての復活だ。
颯真は深く頭を下げた。
すると次の瞬間。
白丸と茶々丸が、同時に颯真の足へと頬をすり寄せてくる。
「ニャー!」
「ニャー!」
元気の良い返事。
颯真は自然と頬を緩め、二匹の頭を撫でた。
白茶さんはその様子を、目を細めながら見つめる。
それ以上の理由は言わない。
白茶さんも深くは聞かない。
再び二匹を撫で、颯真は立ち上がった。
白茶さんと二匹は帰路につく。
颯真は深く息を吸い込んだ。
少しだけ空を見上げる。
そして、前を向いた。
そう思い、颯真は足を踏み出した。
夕暮れの道へと、静かに走り出す。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。