祝日の昼下がり。
やわらかい日差しが住宅街の屋根をなぞっていた。
住宅街の一角にある赤沢家のインターホンが鳴った。
ぱたぱたと足音が近づき、ドアが開く。
扉の前には紙袋を提げためめと葵。
袋の中にはラッピング用品や追加のトッピングが見えていた。
葵はすでに楽しそうに口元がゆるんでいる。
めめは背筋を伸ばし、少しだけ緊張した表情で立っていた。
いいのいいの。材料も場所もあるし、人数多い方が楽しいでしょ。
肩をすくめながら笑い、二人を中へ招き入れる。
玄関に入ると、甘い匂いがほんのり漂っていた。
すでに試作用に溶かしたチョコの香りだった。
スリッパに履き替え、廊下を進む。
めめはきちんと靴をそろえてから立ち上がる。
エプロンを渡し、キッチンへ案内する頃には、もう作業の準備は整っていた。
ボウル、溶かし用のチョコ、型、トッピング。
計量済みの材料が小皿に分けられ、作業台の上はすでに戦闘態勢だった。
めめはその整い方に小さく目を丸くする。
めめはくすっと小さく笑う。
エプロンの紐を後ろで結び直し、手を軽く合わせた。
三人は自然に並び、それぞれの作業に入った。
チョコを刻む細かな音がリズムよく続く。
湯せんの鍋からは白い湯気が立ちのぼり、窓の光をゆらゆらと揺らしていた。
ゴムベラで混ぜるたび、とろりとした艶が出てくる。
混ぜる手は止めず、視線だけ横に向ける。
口元がにやっと上がる。
驚いて顔を上げ、ゴムベラがボウルの縁に当たって小さな音を立てた。
迷いのない即答だった。
型を並べながら視線すら上げない。
視線を落とし、静かに混ぜ直す。
耳の先だけがほんのり赤い。
蘭輝は引き出しを開け、新しい型を取り出す。
テーブルに置かれたそれは、妙に丸くてひらひらした形だった。
さらっと言い、迷いなくチョコを流し始める。
型を軽くトントンと打ちつけ、気泡を抜く。
一方、葵の作業台には小さなカップがずらりと並んでいた。
中身は見た目が同じで区別がつかない。
葵は肩を揺らして笑う。
目をぱちぱちさせる。
葵は指折り数えるように軽く宙を叩く。
少し得意げな顔だった。
蘭輝は一瞬だけ目を細め、それ以上は何も言わなかった。
止めても無駄だと理解している顔だった。
その横で、めめは別のボウルを使っていた。
溶かしたホワイトチョコに、抹茶パウダーを静かにふるい入れる。
細かな粉が雪のように落ち、白の上に緑が広がっていく。
丁寧に混ぜるたび、色が均一になっていく。
葵の手が止まった。
体ごと近づき、めめの手元をのぞき込む。
視線が泳ぐ。
混ぜる手つきが急にぎこちなくなる。
型を整えながら言う。
肩がぴくっと跳ねる。
頬が一気に染まる。
完全に動きが止まる。
ゴムベラがチョコに沈んだまま固まった。
声が少し小さくなる。
不安がにじんでいた。
葵は表情をゆるめる。
そこまで言ったところで。
めめの手がすっと伸び、葵の口を無言でふさいだ。
動きがやたら速かった。
蘭輝が吹き出す。
肩が揺れる。
少し空気が緩む。
そして、ふと思い出したように言う。
直球だった。
小さく可愛い悲鳴が出る。
手元が危うく滑りそうになり、慌ててボウルを押さえる。
顔が一気に染まっていく。
数秒、完全停止。
キッチンに混ぜる音が消える。
やがて、ゆっくり口を開いた。
視線は下。
言葉を選ぶように、ゆっくり。
指先に少し力が入る。
うんうんと深く頷く。
めめはさらに声が小さくなる。
呼吸を整える。
静かに続ける。
その時の記憶をなぞるように。
その言葉に葵と蘭輝はポカンとなりキッチンが静かになった。
湯せんの泡の音だけが小さく聞こえる。
身を乗り出す。
作業台に手をつく。
顔を真っ赤にして、二人の肩をぽこぽこ叩く。
力は弱いが回数が多い。
それに葵と蘭輝はあははと笑った。
めめは深く息を吸う。
胸の前で小さく拳を握る。
その言葉と一緒に、抹茶チョコを型へ丁寧に流し入れた。
表面が静かに広がる。
甘い香りが、さらに強くなった。
なんかコレジャナイ感
お菓子作りの知識とかあんまないから調べながらやったせいでクソ時間かかったわ。
今日の名言
お菓子作り中の話が思いつかない?恋バナでもさせときゃいんだよby神鳴
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!