冷たい風が頬にあたり、気持ちがいい。
ニヤケながらフロイドは言う。
それをボクは後ろでフロイドにしがみつきながら眺める。
今、リドルたちは箒に乗って早朝の街の上を飛んでいる。ずっと決められた時間に起床してきたリドルにとって、この時間は起きていたことがない。
昇る朝日を浴びながら明るくなっていく街がこんなにも美しいものなのか。
リドルはじっと街を見下ろす。
これ食べといて。
そう言われサンドウィッチを渡される。
人を殺した後だ。食欲なんて湧くはずもない。恐る恐る口に運び、ゆっくり咀嚼する。
ん……!!美味しい。具材はサーモンと玉ねぎとレタスだった。サーモンは燻製だろうか?程よい塩味があり、飴色に炒められた玉ねぎは優しい甘さだ。
甘い、しょっぱい、甘い、しょっぱい……。
寮生時代、エース達がよくチョコとポテトチップスを交互に食べていたのを思い出す。当時はドン引きだったが、今は気持ちが分かる。甘味と塩味は罪なマリアージュだな、と思った。
リドルの目的はフロイドに殺されることだ。だがタダでは無い。お願いを聞いてあげたら殺して貰える。そういう条件のはずだ。
フロイドは先に見える大きな海を指さした。
そう言いながらフロイドは、ヒュ〜と着陸しに行った。人魚のくせに、随分箒が上手いなとリドルは思った。
嘘だろ?リドルは学生時代の記憶を遡る。確か昔イデア先輩家に連れてこられた時は最新ジェット機で3時間かかったはずだ。
それを泳いで行くなんて…。どこにあるのかも曖昧な場所にここから何時間かかるんだ?
フロイドが急に海に飛び込んで人魚になり、水しぶきがかかった。
ムッとした表情でリドルは言うと、海の中からフロイドは腕を広げた。
そう言われ、リドルの赤い顔はさらに赤くなる。
そう言い放ち、勢いよくちゃぽんっと海へ飛び込んだ。が。
視界がどんどん暗くなっていく。深く深く沈んでいき、どこまで続くんだろうなとぼんやり考えていた。それにつられて息が苦しくなっていく。
フロイドはリドルの後ろから抱きしめ、リドルの身体が沈んで行くのを防いだ。
フロイドはリドルの顔に手を当て後ろに向かわせ、目を合わせるとキスをした
なんだ、これは……
なるほど。でも一言何か言ってくれてもいいのではないだろうか。
手を差し出され、そのまま引かれていく。
途端、思い出した。
そうだ、お母様はもう居ないのだった。ケーキは食べ放題だし、夜はどれだけ起きていても良い。
自由なのだ。
何処にでも行ける、そんな気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。