第21話

番外編1 身代わり屋、令和に移転しました!?
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2024/05/10 23:52
これは閲覧数1000超え記念の番外編です。本編とは全く関係ありません。
私はなんとなく、ふわふわしたところにいた。
(なまえ)
あなた
(……なんだろう、この感じ)
現実ではないような…、でも現実なような…、微妙なライン。
次に見えたのは、懐かしの光景。
車がびゅんびゅん行き交う通り。アスファルトでちゃんと舗装された道。周りには、スーツ姿の人や学生、デート中のリア充たちまでいる。でも少しだけ違和感があって…。
そう…ここは、



令和。
池田幸次郎
池田幸次郎
ここが、レイワ、ですか
(なまえ)
あなた
!?
突然聞こえてきたその声に驚いた。だって、令和に幸次郎さんがいるわけないから。
緋乃
緋乃
なんだか凄い世界…何が起きてるの…!?
(なまえ)
あなた
!?
次に聞こえてきたのは緋乃の声。おかしい、おかしすぎる。こうなるはずがない。令和に…幸次郎さんと緋乃が…いるわけない。
そして最も気になるのは、先程からの妙な感覚だった。ふわふわしたような、でもしていないような。変な感じがするようでしない。これは一体…
そうか、これは、夢の中だ。ならば全てに辻褄が合う。
しかし夢だと分かっていても、久々の令和を楽しみたかった。起きて大正に戻る気は起きなかった。
緋乃
緋乃
ねえ、お姉ちゃん。ここはどこ?レイワ、ってなに?
緋乃に突然質問されて、私は何と答えたらいいか、わからなかった。逃げれば良いのか、ちゃんと答えれば良いのか。


でも、せっかくの夢だ。思いっきり、暴れてやろうではないか。
(なまえ)
あなた
………未来だよっ!
一思いに言い切ると、緋乃は目を丸くした。
緋乃
緋乃
良くわからないけど…なんかすごいよね!未来かぁ。めいいっぱい楽しもうよ、お姉ちゃん!
緋乃は飛び跳ねてはしゃいでいる。
(なまえ)
あなた
そうだね、楽しもっか
池田幸次郎
池田幸次郎
どこか行ってみます?
(なまえ)
あなた
うーん…
令和とはいえ夢の中。私の知っている令和とは若干の違いがありそうだ。だから具体的な名は出せないけれど、抽象的な名なら出してもいいかもしれない。
(なまえ)
あなた
遊園地とか…動物園とか…?あとは…ゲーセンとかファミレス…ですかね
池田幸次郎
池田幸次郎
その遊園地というのはどうでしょう?
緋乃
緋乃
楽しみです!
緋乃も乗り気なようなので、私は遊園地に行くことにした。
夢というのは都合がいい。すぐに遊園地を発見した。それも、結構大きい。そして、空いている。並ばなくても人気アトラクションに乗れる程だ。
はたまた都合よくポケットに丸まっていた一万円札を取り出して、3人分のチケットと交換した。
緋乃
緋乃
まずは…あれ!ジェットコースター!
緋乃が見ているジェットコースターは日本屈指の大きさのもの。角度も急だ。一回転するところもある。乗ったら相当怖いかもしれない。
池田幸次郎
池田幸次郎
おお行きましょう行きましょう
走っていってしまう緋乃を追いかけて私はジェットコースターの乗り口までやってきた。
緋乃
緋乃
ちょうど動き出したところだった…
見るとジェットコースターは最初の坂を登っている。ガラガラと、ベルトコンベアの音がした。
池田幸次郎
池田幸次郎
残念ですね。でもまあ、すぐですからきっと
(なまえ)
あなた
せいぜい3分くらいですよ。3分なんてカップラーメンとおなじくら…
そこまで言いかけると、ものすごい叫び声が聞こえた。
緋乃
緋乃
あんなに叫ぶの…?
池田幸次郎
池田幸次郎
叫ぶのが楽しいんですよ
緋乃
緋乃
そうなんだ…
(なまえ)
あなた
でも結構…大きいですよね、このジェットコースター
池田幸次郎
池田幸次郎
ですよね…なんだか怖くなってきました
(なまえ)
あなた
大丈夫ですよ!楽しいので
他愛もない話を繰り返していると、順番が回ってきた。開いたゲートから乗り込む。
(なまえ)
あなた
…1列目だ
緋乃
緋乃
私1列目無理…
私は1列目に案内されてしまったが、緋乃は独り言のようにぼそりと意見を言ったために2列目になった。幸次郎さんが代わりに私の隣に座った。
池田幸次郎
池田幸次郎
先頭ですね…
幸次郎さんも本当は後ろが良かったようである。でも座ってしまったものは仕方ない。
(なまえ)
あなた
楽しみましょう!
池田幸次郎
池田幸次郎
…ですね
発車のベルが鳴り、ジェットコースターはぐんぐんと上昇し始めた。もうすぐ…頂上。そしてそこから…急降下。
そんなことを考えている暇もなく、私に大きな重力がかかった。
緋乃はなんだかんだ大声で叫んでいる。私も結局叫んでしまった。幸次郎さんは、体を固くしていて…。
(なまえ)
あなた
…あれ?
段々とジェットコースターに乗っている感覚がなくなっていく。景色も薄れていく。頭が後ろに倒れていくような気がした。
(なまえ)
あなた
(そうだった、あそこは夢の中…)
どうやら、目が覚めてしまったようだった。最近毎日見る板張りの天井が視界いっぱいに広がっている。大正に戻ってきてしまった。残念。


ジェットコースター、最後まで楽しみたかったなあ…。


そんな事を考えながら、体を起こす。布団から出て、畳もうとしたその時。布団から、1枚の紙切れが出て来た。見覚えがある。
(なまえ)
あなた
…!!
それは私が、さっきまで、そう、夢の中・・・で持っていた、遊園地のチケット。
(なまえ)
あなた
…夢、だったはず…
夢だったはずなのに、チケットがこの大正時代に存在する。これほど不思議なことも…あるものなんだ、と思った。そしてだんだん恐ろしくなってきた。
(なまえ)
あなた
…なんであるんだろう
目の前のチケットが不気味に思えて、私はそれを箪笥の奥に押し込んだ。もう、目にすることのないほど、奥に。

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