私は、立ち上がった。
怒鳴られたが、そんなことでびびる私じゃない。ただ、今あるのは······怒りと憎しみのみ。
私は、一瞬で父の目の前に来て、胸ぐらを掴んだ。
父は、私の手を掴むが、びくともしない。
母は、私をビンタしようとするが、片手で受け止めた。
なんか、母が言っているが、聞こえない。今の私の心は、闇に支配されているのだから······。怒りと憎しみだけの負の感情だけが残っている。この状態をとめることが出来るのはもういない。私は、完全に堪忍袋の緒が切れてしまったのだ。
そうすると、父親は、隠し持っていたナイフで斬りかかろうとした。
私は、運動神経が良かったのと、怒りと憎しみの力で、かわし続けた。
香菜は、父の首を締めた
私は、ナイフで父を刺した。この手で。
そして、母も父と同様、ナイフで刺した。もう、私の心は、完全に壊れていた。私は、生まれて来なければ、良かったのか······。死ねば良かったのか······。
妹にみられた。いずれ、私は、警察に捕まるだろう。もう、何もかも、失ってしまった。どうせ、失ったこの世界にいるなら、死んだ方がましだ······。私は、自らナイフを自分に向けた。これで、私は、何も失った世界から楽になれる。誰も私が死んでも、きっと悲しまないだろう。そうして、私は、ナイフで自殺をしようとした。
だけど······
私は、その言葉で正気に戻ることができた。父も母も息の根をとめていた。私が殺したんだ。この手で。真っ赤な血にそまった手を見て、今の現状を理解した。私は、絶望した。何が間違っていたの?どうすれば良かったの?抱えきれない罪の重みに心が絶えきれなかった。
私は、小雪に抱き締められた。何でなの?私は目の前で、両親を殺したのに。何で、責めないの?私は、妹の行動が理解出来なかった。
私は、その一言で、全て思い出した。私は、あの時、誓ったんだ。妹だけは、絶対に護る。妹の笑顔を護ると。でも、今はどうだろう。私は、自分勝手に自殺をしようとして、妹を悲しませているだけだ。何が、妹を護るだ。何が、妹の笑顔を護るだ。それは、全て私の妄想だったんだ。
······
どうせ、死なないなら······私は······
償いをしなくては、ならない。
本当は、死んだ方がいいと思ったけど、これ以上、妹の悲しい顔をみたくはない。
ただ、一言。妹に言った。そして、私は覚悟を決めた。妹と暮らして、妹をいっぱい笑顔にして、時には人を助けて······。それが、私にとって、精一杯の償いだから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。