第8話

第七章 ー 繋がるハーモニー ー
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2025/12/18 09:00 更新
歌の迷廊は、まるで巨大な楽器だった。
揺れる壁、踏む度に音のなる床、天井を走る光の波。
その全てが、私たちの声を“待っている”。
( ここを抜けるには……五人で、一つのハーモニー……
  だけど天馬先輩がいる時点で不安しかない…! )
門番の声が再び響いた。
門番
「 では…“心を合わせた歌声”を聞かせてもらいましょう。 」
「 任せろ!オレの美声に道がひれ伏すぞ! 」
「 いや、ひれ伏されたら困るんだけど、? 」
一歌
「 とにかく落ち着こう。息を合わせていこうね。 」
こはねが小さく手を上げる。
こはね
「 …えっと、とりあえず…私、最初の音とるね……? 」
えむ
「 こはねちゃん、がんばれーっ!! 」
こはねが胸に手を当て、そっと声を出す。
――♪
透明で、澄んだ音。
( やっぱり…こはねの声って、安心する。 )
続いて一歌が重ねる。
――♪♪
こはねより少し低く、寄り添うような音だ。
えむはふわっと柔らかく元気なハミングで続き、
私も呼吸を合わせて声を重ねた。
問題は――
天馬先輩だ。
「 よし…オレも行くぞ……はぁあーーーー!!!! 」
「 叫ぶなーーー!!! 」
一歌
「 司さん、音階っ!音階を意識してください!! 」
「 わ、分かった!!えっと……ド〜〜~…? 」
「 違う違う!!それ違う方向!! 」
天馬先輩の音がズレる度に、迷廊の壁がガガガッと回転する。
こはね
「 ひゃぁっ!?また壁が……! 」
えむ
「 司く〜ん、大丈夫っ!もっと軽くでいいよっ♪ 」
「 軽く…軽くか……よし……! 」
今度はやりすぎていた。
「 ……ド… 」
「 極端すぎて聞こえないんだけど!? 」
一歌
「 司さん…普通、普通でいいので…… 」
少し時間が経ってこはねが深く息を吸う。
こはね
「 …司、さん、!一緒に…合わせてみませんか……? 」
「 …!もちろんだ! 」

こはねが優しい音を加え、
一歌が芯のある音で支え、
えむが明るさを添え、
私が輪郭を整え——
天馬先輩が、そっとその中心に音を添えた。
今度はズレなかった。
五つの声が重なった瞬間、
迷廊全体が光に包まれた。
門番
「 ……見事。五つの心、揃いました。 」
壁が一つずつ消えていく。
道の先に、鮮やかな光が差し込んだ。
こはね
「 や、やった…! 」
一歌
「 うん…みんな、凄かった。 」
えむ
「 大成功〜っ♪ 」
「 天馬先輩……普通に歌えるんだ… 」
「 おい!?褒めてるのか貶してるのかどっちだ!? 」
その時、門の向こうに広がる景色が見えた。
虹色の光が降り注ぎ、夢のような情景が辺りを包む。
「 さあ、みな!ついにワンダー王国だ!! 」
えむ
「 うんっ!ようこそ、あたし達の王国へ! 」
こはね、一歌、私は、自然と足を止めた。
( これが……ワンダー王国…! )
新しいセカイが、私たちを待っていた。
To Be Continued ……

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