霧がゆっくりと裂けていく。
ズ…ン……と地面の奥から響くような音がして、

こはねの手に力がこもる。
私はそっと包み、支える。
えむが一歩だけ前に出た。
笑っているように見えるが、その目は真剣だ。


霧の向こう――
影が輪郭を帯び始めた。
黒では無い。
白でも無い。
淡い光の粒が集まって人の形を作っていく。
長い袖。
重たげな装い。
顔には表情のない仮面。

その声は驚きよりも、
覚悟を決めた者の静けさだった。
門番は杖を地面にトン、とつく。
――風歌の道全体が震えた。
一歌が前に出ようとした瞬間。
えむは小さく息を吸い、低い声で言う。
門番は、ただこちらをじっと見ていた。
でもその視線は、体ではなく、胸の奥を見るようだった。
逃げたい気持ち、不安、罪悪感――
全部を、見透かしてくる。
門番の仮面が、僅かに頷いた。
声は歌の余韻のように響く。
低くて、冷たくて、どこか悲しげだった。
一歌が眉を寄せる。
門番は答えない。
ただ杖をもう一度、軽くトンと鳴らす。
足元に、四方向へ枝分かれする光の線が走った。
えむは振り返り、少しだけ切ない表情で言った。
門番が静かに語りかけてくる。
こはねの肩が震えた。
そういうと、こはねは少しだけ息を吸った。
一歌は剣の柄に触れながら、静かに目を閉じる。
門番は杖を高く掲げた。
光がゆらりと揺れ――
試練の幕が、いよいよ上がろうとしていた。
風歌の道の試練が、本格的に始まるんだ。
To Be Continued ……












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。