第6話

第五章 ー 門番の影が問うもの ー
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2025/12/16 03:00 更新
霧がゆっくりと裂けていく。
ズ…ン……と地面の奥から響くような音がして、
こはね
「 …っ……! 」
こはねの手に力がこもる。
私はそっと包み、支える。
えむが一歩だけ前に出た。
笑っているように見えるが、その目は真剣だ。
えむ
「 大丈夫。ここまでは門番の目覚めだから。 」
( ……目覚めってことは、まだ本気じゃないの、? )
霧の向こう――
影が輪郭を帯び始めた。
黒では無い。
白でも無い。
淡い光の粒が集まって人の形を作っていく。
長い袖。
重たげな装い。
顔には表情のない仮面。
一歌
「 ……ほんとに、いたんだ… 」
その声は驚きよりも、
覚悟を決めた者の静けさだった。
門番は杖を地面にトン、とつく。
――風歌の道全体が震えた。
こはね
「 ひっ…… 」
「 こはね…大丈夫、大丈夫だから、 」
一歌が前に出ようとした瞬間。
えむ
「 待って待って!まだ戦いじゃないよっ! 」
「 じゃあ、これは……? 」
えむは小さく息を吸い、低い声で言う。
えむ
「 ――心を、見てるんだよ、! 」
門番は、ただこちらをじっと見ていた。
でもその視線は、体ではなく、胸の奥を見るようだった。
逃げたい気持ち、不安、罪悪感――
全部を、見透かしてくる。
( こはねの震えも…私の焦りも…全部……? )
門番の仮面が、僅かに頷いた。
門番
「 ……四つの心、揺れている。 」
声は歌の余韻のように響く。
低くて、冷たくて、どこか悲しげだった。
一歌が眉を寄せる。
一歌
「 …揺れていては、通れない……そういうこと? 」
門番は答えない。
ただ杖をもう一度、軽くトンと鳴らす。
足元に、四方向へ枝分かれする光の線が走った。
こはね
「 道…が、増え…た……? 」
えむ
「 ううん。問いだよ 」
「 問い……、? 」
えむは振り返り、少しだけ切ない表情で言った。
えむ
「 ここからが本当の試練っ、
  門番は、心の核を確かめるの。 」
( 心の…核……?)
門番が静かに語りかけてくる。
門番
「 ――問う。
  逃避か、覚悟か。
  執着か、願いか。
  恐れか、祈りか。 」
こはねの肩が震えた。
こはね
「 そん、なの…分から、ない……っ、 」
「 分からなくても大丈夫。私がいるよ。 」
そういうと、こはねは少しだけ息を吸った。
一歌は剣の柄に触れながら、静かに目を閉じる。
一歌
「 怖くても、進むしかない……
  みんなで、道を選ぼう。 」
門番は杖を高く掲げた。
光がゆらりと揺れ――
試練の幕が、いよいよ上がろうとしていた。
門番
「 旅人達よ。
  心の道を選べ。
  それが、お前たちの答えだ。 」
( 選ばなきゃ…この先へ進めない……! )
風歌の道の試練が、本格的に始まるんだ。
To Be Continued ……

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