森の奥へ進むにつれて、空気が少しずつ軽くなっていく気がした。
えむが先頭を跳ねるように歩いていくから、
こはねの緊張もほんの少しだけ和らいでいる。



私は心でそっと思いながらも、弾むえむの背中を見つめていた。
一歌はその少し後ろを歩き、警戒は解かないまま私達の様子を見ている。
昨日会ったばかりだが、
やはり現役騎士団が居ると妙な安心感があった。

その言葉に、胸が少しだけ暖かくなる。
こはねが私の袖をそっと引っ張った。
こはねらしい。
“責められた”じゃなくて、“気づいてくれた”って感じたんだ。
一歌も、どこか誇らしげに言った。
私達がそんな会話をしていると、
えむは突然、くるっと振り向いて叫ぶ。
えむが指したのは、苔むした大きな岩。
だかよく見ると、その裏側に小さな隙間があり、
そこから風が抜けている。
けれどえむは、当然のように笑っている。
二人で即答すると、こはねがクスッと笑った。
その笑顔に、胸の奥がだんだん温かくなる。
えむが洞窟の入口に立ち、振り返った。
少し胸がざわついた。
信じたい。でも信じきれない。
そんな私の気持ちを見透かしたように
こはねが小さく手を伸ばしてくる。
私はその手を握り返した。
えむが笑って導いて、一歌が前を歩き、こはねが隣にいる。
私達は“風歌の道”へと足を踏み入れた。
逃亡の旅は――
少しずつ、“出会いの旅”へと、変わり始めていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。