濃い霧の中、緑色のランプも相まって不気味に感じる。
緑色のランプの光は水面に反射し、
濁った世界はまるで水面を境に別の境界のようだった。
あのときの恐怖が蘇りとても覗く気にはなれなかった。
その様子を隣で見ていた鬱先生はニッと頬を緩ませると私に声をかける。
急に問われて少し動揺を残しつつ名前を言う。
へ〜…と少し意外そうに言う彼。
意味深にこぼした言葉に私は疑問を覚える。
頬杖を付き、彼は舟が進む先の方を眺める。
私はみんなの話をあまり理解できないまま、
考えるのを放棄していた。
そういえば、この舟って、なんで動いてるの?
随分ざっくりとした答え…
でも私はそれ以上聞く気にはならなかった。
数学の公式と同じように、
"そういうものだ"と考えたからだろうか。
その意味を追求するようなことはしなかった。
霧が少しづつ晴れ、影がフッと現れる。
鮮明に映れば、まさにそこは和の真骨頂。
江戸時代を彷彿とさせる町並みや人々(?)の服装。
もっと先、奥の方では小さな鳥居や遠目から見てもとても大きい神社がある。
船が陸に付き、続々と降りる中
わたしも続いて黄泉の国へと足を踏み入れた。
※宝船とは
本来ならば七福神が乗っている船ではあるが、この噺では漁獲業などの用途として使われていると思ってください
いまいち全容がつかめない。
一体何を言ってるのだろうか…。
ゾロゾロと歩く異様な生き物、人に似た化け物が歩いていく。
服は和服に、中には舞妓さんのような人もいる。
この光景は、さながら化け物が人間の真似をしているようにしか見えない。
霧がかる方向を示す手の先を見れば、
薄っすらと黒い影が映る。
霧を割って入ってきたのは現実世界でもなかなかお目にかかれない大型船。
見たことのない魚や海の幸に紛れて人のようなナニカを積んでいる。
半人半魚、神話として伝えられている人魚だった。
しかしその人魚も美しいとされている姿とは真反対、醜く歪んで、髪はバサバサ、まるで老婆だった。
地上……いや、此岸に伝わっている人魚伝説は、
上天さんの言う通りだ。
でも……、あれほどまで違うんだろうか…
しかし……、私は最初襲ったおばけは何だったのだろう。
彼女らは人魚ではなかった。
顔立ちは整っていて、それでいて人魚…ではなかった。
私の知らないこの世界は、
私が思っている以上に壮大で恐ろしい。
そう話していると、私達の上を何かが横切る。
死神さんがそう言うと、彼らや歩いていた殆どの人が屋根のあるところへ避難していく。
避難しないものもいたが、私は意味がわからずポカンとしていた。
「こっち来とき」と言われ、有無を言わずに屋根の下に入る
ロボロさんは私のすぐ近くに寄り、
神々が来ると言われた方向を見つめる。
純白の鱗を携え、手足の鋭い爪を持つ、
長いヒゲを持った細長い生き物。
名を竜神と呼ぶ。
青い火の玉(魂)を側に浮遊させ、普通あるはずの目は無く、代わりに額に大きな目を持つ。
赤と白の締め縄を首に下げ、
真っ白な毛が青みがかっていて光を反射し白飛びしている。
名を琥珀様というらしい。
他にも、目、鼻、などの器官を持たず口の部分だけが裂けている人型の生物 「カゲロウ様」
私達の世界で言う七福神に似た人たちも浮遊しながらおりてくる
彼らは多すぎて名前を持たないらしい
空を舞う竜神が急降下し、真下には人が立っている。
グロ注意⚠⇓、苦手な人はごめんなさい!!by作者
何が始まるのかと思っていた矢先、私の目を何かが遮る。
手で隠されたようだった。
その手の主は上天さん。
覆いかぶさるようにして私の前に立っている。
そして何より、この動作と同時に聞こえてきた鈍い音。
飛び散る液体が地面に滴る生々しい音。
バキッブチッ………
一体何が起きているというのだろうか…。
時々笑い声のような、それにすら似ても似つかない鳴き声が響く。
おそらく、神々の声?…なのだろうか…
ただ、目を隠されていても、ひしひしと伝わるナニカ。
恐怖を煽る生々しい音に体が震えた。
目の前で起きているおぞましさを物語っている。
何かが水面に落ちる音や、
ブチブチと繊維が両端の引力によってちぎれるような音。
兎にも角にも、とてつもない恐怖を感じた私は、
思わず上天さんに身を寄せる。
辺りから足音が聞こえてきた頃、目に当てられていた手をどかされ
シュルッと上から何かを解く音がする。
怖くて目を開けられず、音だけ聞いていると
何かを顔にかけられ、後頭部で結ばれる。
見えづらくなった視界のせいで、
握られている手に感覚が集中する。
いつも雑面で顔を隠しているため、表情がわかりにくいが、
その壁がなくなっているからか心を見透かされているような感覚になる
赤くなる頬を隠すように手を顔の前にする。
目の前で繰り広げられているのは、
何が何やらわからないけど、置いていかれてるのは確か。
ちょっと気になる。(・ิω・ิ )
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。