貴方side
自動販売機の隣の椅子に腰掛けながら
りんごジュースをゆっくり飲んでいた時。
ギターを持ったのんちゃんが
自動販売機の前に立ってジュースを買っていた。
のんちゃんが買ったのは
大ちゃんも飲んでいたあの炭酸飲料。
自動販売機から炭酸飲料を取りだしたのんちゃんは
私の隣に座って炭酸飲料を眺めていた。
どうして私の前だけに現れたんだろう。
皆も会いたかったはずなのに
大ちゃんも皆に会いたかったはずなのに
どうして私だけに現れたんだろう。
のんちゃんと先輩のことについて話せば
のんちゃんが買ったジュースが半分くらいに減り
私もさっきより大分減っていた。
間違いなく
大ちゃんは1回くらい皆に顔を出すに違いない。
大ちゃんものんちゃんみたいに
仲間思いで家族思いだから。
2人で話していた時
智にぃがバンド仲間と一緒にこっちに来た。
皆で自分のクラスに戻るちょっとの時間でも
途中まで一緒に帰った。
のんちゃんと一緒に教室に入れば
教室からは拍手が鳴り響いた。
どうやらクラスの全員がのんちゃんの
バンドの演奏を聞いたらしい。
のんちゃんも嬉しそうに一つ一つ対応していた。
先生の解散の合図で帰っていく生徒たち。
のんちゃんに声をかけられ
私ものんちゃんの隣に並んで
智にぃのクラスまで一緒に向かった。
濵田先輩、照史先輩、流星先輩、智にぃ、
そしてのんちゃんで私。
この順番で並びながら学校から帰っている。
流星先輩が下駄箱でしげに挨拶しようってことで
私たちは全員賛成して先輩の家に向かっている。
思い出話に花を咲かせた皆が誰も口にしていないのに
わざと遠回りで先輩の家に向かう。
遠回りをする時に必ず通る
あの皆がよく集っていたと言うあの公園。
先を歩く照史先輩や濵田先輩が足を止めて
智にぃも流星先輩も足を止めた。
後ろにいた私とのんちゃんは
何故足を止めたのか分からない。
そう言った智にぃの目には涙が溜まっていた。
他の先輩の目にも涙が溜まっていた。
智にぃが指を指した方を見れば…
公園の柵の近くの草の隙間から見える
夏休みから姿を消していたもの。
その草で遊んでいる少し大きくなったもの。
私が皆を抜いて先を歩けば
皆も後から付いてくる。
私がそれを優しく抱きあげれば
皆は涙を流した。
先輩が私のために作ってくれた
サプライズの曲の歌詞を思い出して
皆がまた更に涙を流した。
私も涙が溢れた。
ありがとう。
フラッと現れくれて。
私はまた、幸せだよ。
私だけじゃない、皆も幸せだよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。