貴方side
次の日
昨日よりも熱気がさらに増している体育館内。
私の隣に中間先生が立った。
先生はそう言って笑ったけど
でもどこか心から笑えていなかった。
私の呟いた声は
周りの歓声でかき消されてしまった。
昨日よりも盛り上がる体育館内。
ピアノに当たるスポットライトの色は
先輩のよく似合う赤色だった。
大歓声が体育館内に響きながら
バンドのラストライブが終了した。
皆がゾロゾロと名残惜しそうに
体育館から出て行く。
私は体育館の壁に寄り添いながら
人の流れと反対にステージの方に歩いた。
ステージに行けば
ちょっと目が赤くなっている皆。
ギターを持ったまま智にぃが下に降りてきた。
確かに言っていた。
私は勝手に思ってた。
この日のために作り終わらせると思っていたから
まだ出来てないって思っていた。
智にぃがステージに上ってギターを置いて
カホンという楽器に変えて
のんちゃんもギターからピアノに変わった。
智にぃの合図で始まった
私に向けたサプライズの曲。
綺麗なイントロを奏で始めたバンドの皆。
のんちゃんの歌い出しから始まったこの楽曲。
ちょっと高めのキーで作られたこの曲は
きっと先輩が歌いやすいように作られている。
先輩は今どこで聞いてるかな。
先輩なら今頃エアーピアノで弾いてるかも知れない。
歌ってるのかな。
私は先輩の声で
この曲を聞きたいよ。
私は先輩の声で
この曲を聞きたかったよ。
泣きたくなかったのに
心に残してくれた思い出と
事故前の先輩の言葉が思い出して涙が溢れた。
あの時の…
事故前の先輩の言葉と事故の瞬間が
それに事故前の私たちの行動が
この歌の歌詞があまりにもピッタリだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。