夢主side
-ホワイトデー-
ホワイトデー当日の放課後、裏庭で桃の花を眺めていた所、
急にいふくんの声が聞こえた。
振り返ると、いふくんがこちらに向かって走ってきていた。
いふくんは私のところまで来ると、ハァハァ、と呼吸を整えた
いふくんは小花柄の袋を渡してくれる。
まさかお返しをくれるとは思わなかったから、驚いてしまった。
ぽつ、といふくんが言った声が耳に入ってくる。
私が手伝う…のはダメか。
ほかの女子に反感を買われる。
そう言いながら、いふくんは校舎に戻って行った。
これから残りの子にお返しを返すんだろう。
何で…いふくんが他の子にお返しを返してるだけで傷ついているんだろう…。
いふくんだって、人気者だしで、モテるし
…そういった物は沢山貰うのは当たり前だ。
自分にそう言い聞かせた。
いふside
可愛すぎる、ほんま。
笑顔で『頑張って』とか、尊死する
楽しみやな。
俺がお返しに渡した物は、…やから。
夢主side
家で開ける気にもならず、裏庭でいふくんに貰ったお返しを開けたんだけど…、
袋の中に入っていたものは、マシュマロ。
マシュマロは…嫌いっていう意味を持つ。
だって…あのカードの裏には、返事はホワイトデーにって書いた。
だから…お断り、という事?
あまり考えすぎると、悲しくなってきた。
気のせいかもしれないし、マシュマロを口の中に入れた。
カリッ…フワ、
食感が楽しい。
…そして、美味しい。
そう、手を伸ばして気づいた。
マシュマロの他に何かが入っている事に。
取り出してみて、出てきた物は…飴。
飴は…好きって意味になる。
だから、カリッってした後にフワってなるんだ。
でも…飴とマシュマロって…どっちの意味!?
少し袋を見ていたら、袋の外にカードが付けられていた。
でも…、少しでも希望があるならば…そっちに縋ってしまう。
そんな私が居た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。