…今回こそ、動機が綺麗に収まるから何事もなく終わりたかったのに。
そう現実は甘くないんだなぁ。
仕切られていたカーテンが乱暴に開かれる。
誤魔化し方の下手さに自分でも呆れてしまいそう。
佳沙音さんは微動だにせず、静かに僕を睨んでいた。
多分、わかってたんだなって思う。察しが良すぎて困るくらいに。
☆
現実という敵を、選んで戦って、まるでヒーローのような。そんなものを想像しては決していくの繰り返し。
もう、叶えたい未来とか何にもないから、
誰かの夢になれるように心の奥底でこっそり待っていた。
…そんなこと、あるわけないのに。
そのくせ、明日が怖くて、明日を嫌って、もうどうにでもできない過去に願う。
なんで、あんなこと提案したんだって。
どうしようもなくなって、本当は叫んでやりたい。
ただ、時間はミリも待ってくれやしない。
当たり前のように月は地平線に沈んでいって、太陽は顔を出す。
…完全に置いていかれる。
弾みをつけて、飛び降りる。
2階とはいえ、今の病弱さなら助からない。
けど。
この夜だけは違った。
ギュッ
失ったその体は夜空に舞った。
あの日世界に羽ばたいた、2つの魁星。それはもう二度とかえってこない。
彼は疲れたような、馬鹿馬鹿しいような、でも純粋な笑みを向けて僕を引っ張り、連れ戻した。
…。
…怖い。
また、あんな風に言われるのが。この病気と共に生きていくのが。
…言われた意味がわからない。
そのまっすぐな桃色の片目は嘘なんて混じっていない。本気の瞳だ。
懐かしい温もりを感じた。
目が潤みそうだった。
そんなこと…言われるくらいなら。
もう、昨日までの過去を変えてくれとは願わない。
これから、明日から。
また明日もこうやって、君と笑えたら。
いや…、笑わせて。
…一緒に、居させてください。
その日は当たり前のように自殺未遂だけど、こんなに清々しい夜を過ごしたことはなかった。
小川のように夜風が吹き抜ける。
ー
あの日から、世界は変わったって?
うん。それなりには。
最初は本気で思ったよ。僕のことを見てくれる、1人の友達として。
でも、期待しようが運命という残酷な未来には抗えなくて。
急に咳が止まらなくなった。
いつもの倍の苦しさを一晩で乗り越えるのには、僕の体力ではとても辛い。
ナースコールを押そうとする彼を止めた。
そんな必死な顔をしなくていい。…僕は大丈夫だから。
それが、運命かもしれないのに。
過呼吸になり、心臓を押さえる。
荒い。荒い。荒い。
熱い。熱い。熱い。
でも、君とまだ生きたい。
矛盾だけが彷徨う。
あれから見た景色は全部、本当に綺麗だった。
夜空も、朝日も、残酷だと思っていた夕焼けすらも。
飽き飽きするほど同じ角度で眺めた空なのに一つも忘れていない。
いつでも、思い出せるように、脳みそ…いや、心の中にしまってる。
心配そうに僕を覗き込む彼の目が、大きく見開かれた。
この体では歩くこともままならないけれど、どっちみち足があっても独りではどこにも行けなかったと思う。
そしたらそのまま、藍色の空に溶けていくんだ。
君になら、そうされてもいいよという今の僕にできる最大限の気遣い。
軽く、ぱちんと叩かれた。
誰かに叩かれるのは初めてかもしれない。
そう言われて言い返せなかった。
でも。
春は過ぎたはずなのに、目の前の桜色はいつまでも光って見えた。
ー
あれからかざねがナースコールを押して、バタバタと彩菜先生になんやかんやされて何とか最悪の自体は免れた。
いつ、この世からいなくなってしまうかなんてのは誰も知らない。
もしまた明日の夜に、お父さんとお母さんに逢いに行こうとしたら、君はもう今度こそ
いないのかな
止めてくれないのかな
それでも
それでも…願ったから。一緒にいるんだから。
こんな僕と、居てくれる君。
お父さん、お母さん
またね。
僕は探し物を見つけた。…未来という空に向かって突き進んでいくよ。
いつまでも過去に引きずられてなんかいられない。
そんな、作ったような顔じゃなくて、楽しく笑っていよう。
未来を、少しでも君と居たいから。
そう心に留めて手を握る。
心の中で叫ぼう。
この出会いを、生きてるかもわからない、果てしない空の先で思い出せ。
…未来の僕ら。
スクロールお疲れ様です。
第30話もお読みいただき、ありがとうございます。
初の曲パロということで、一曲目はアスノヨゾラ哨戒班を選ばせていただきました。とても難しかった😇
できてるかどうかは皆さんの判断にお任せします()
さてさて、次の第31話は🍃さん視点になり、🐻❄️さんと🌸さん回はお休みになります。のんびり待っててくださいね☺️
帰省中&例の女性の期間でとても今体がだるいんですが、せめてものとして投稿しました。無理せずまた書いていきます💪
今日はエイプリルフールですね…、それといった嘘はご用意してません()
ではまた次話でお会いしましょう!















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。