ボクは、自分の髪を引っ張るあなたさんの腕を強く掴んだ。
それに驚いたのか、あなたさんは一瞬ボクの事を見てくれた。
ボクはあなたさんの目を見つめた。
あんなに綺麗な瞳が、今は震えてる。
口調が強すぎただろうか。
掃除を終わらせた時から、ボクは嫌われてしまったのに、もっと嫌われちゃったかな。
そう思うと心が苦しい。
相変わらずあなたさんは黙りで、周囲の人達は全員あなたさんに詰め寄った。
パーティーが始められないだの、事件を起こすつもりだっただの、いつまで経っても始められない別の部屋に閉じ込めておけば良い一人一人確実に殺っていく作戦だった放っておいてさっさと始めようだの。
こんな言葉ばっかりだ。
ボクは腹が立った。
散々あなたさんに救われてばっかりだったみんなが、こんな時ばっかりあなたさんを寄って集っていじめる。
こう思ってしまったボクはきっと罰を受けるだろう。
でもね、ボクはキミが疑わられるのはちょっと…いや、絶対に嫌なんだ。
ああ…誰かボクを殴り飛ばしてくれないかな。
本当はあなたさんに寄り添って、あなたさんが思ってる事をボクが受け止めてあげなきゃなのに。
あなたさんが笑顔になるまでがボクの思い描いていた今なのに。
ボクは最低だ。
もう後には引けない。
ボクはあなたさんの額に自分の額をくっつける。
最初に会った時にやったみたいに。
こうすると、あなたさんはボクの目だけを見てくれる。
ほっとしているあなたさんを見て、ボクは安心した。
今は何も聞かない方が良いという事で、みんなは大広間に帰ってしまった。
ボクとあなたさんは、そのまま廊下に取り残されていた。
日向クンは、七海さんとソニアさんに連れていかれてしまった。
みんなが戻ってからかれこれ5分が経った。
手を繋ぎながら廊下に二人で座り込んでいる。
そしてずっと泣いてる。
ボクの手を強く握りながら、子供みたいに泣いてるあなたさんを可愛いと思うのは場違いなんだろうけど。
あなたさんは感情も精神もぐちゃぐちゃになってしまって、あなたさんにとって、これ以上の絶望はないだろうな。
こうして乗り越えて来たからこそ、あなたさんには絶対的希望を感じるのかもしれない。
一向に泣き止む気配がない。
さて、どうしたものか。
というか、あなたさんはボクの傍に居てもいいのかな。
あんなに酷いことを…ボクは言ったのに。
ボクは、あなたさんの機嫌が明らかに悪くなった瞬間にボクが言ったことを思い出した。
どれも考えれば一瞬でわかる事なのに、あなたさんにはなんでも話してしまう。
それが嫌な言葉でも。
さっきからボクは変だ。
調子が狂いすぎてる、落ち着け。
ふとあなたさんを見てみると、息を整えようと息を吸って吐いてを繰り返していた。
しばらく待ったあと、あなたさんから返事が来た。
あなたさんは、全部ボクにぶつけてくれた。
それをボクは投げ返さない、ちゃんと、1つ1つ大切に受け止める。
そうしないとあなたさんが消えちゃいそうな気がして仕方がないから。
そう言うとまた泣き出してしまった。
可愛い顔が余計に可愛くなってしまう。
泣き顔フェチ…とやらになってしまったのだろうか。
今なら言える。
心の底からそう思う。
やっぱり、ここから出る前にあなたさんの支えに成れる人が必要だ。
その存在がボク以外の誰かになるって想像するだけで吐き気がする。
あなたさんの隣に立てるのはボクだけで、あなたさんが選ぶのもボクだ。
それはきっと神様が決めた運命なんだよ。
どうやら、ずっと帰って来ないボク達を気にして見に来てみたら、こう言う状況だったという事らしい。
この人が“義兄さん”になるのかと思うと…。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!