あなたside>>
私はぐちゃぐちゃの顔で会場に戻ったら、ソニアさんと蜜柑ちゃんに顔を拭いてもらったり、少し化粧をしてもらったりした。
だいぶとマシな顔になったから、とりあえずまた大広間に戻る事にした。
私が大広間に入った瞬間、一瞬だけ冷たい風が吹いたみたいだった。
危険物を回収するべく、兄ちゃん達はどこかへ言ってしまった。
私は隅っこの卓上ランプが置かれているテーブルの前に突っ立っていた。
こうしてみんなと交流する機会があるのは凄く大切だと思う。
狛枝くんはそう言うと、私の手を取って手の甲にキスをした。
私が慌てていると、狛枝くんは笑っていた。
そうして、私は狛枝くんに手を引っ張られながら色んな人の場所を巡った。
まず始めに声を掛けたのは、蜜柑ちゃんの所だった。
蜜柑ちゃんはそう言って私を抱きしめてくれた。
私のシャツが蜜柑ちゃんの鼻水と涙でグチョグチョになる前に泣き止ませなきゃ。
私はそうやって私を思って泣いてくれる人が居るんだと知って嬉しくなった。
狛枝side>>
そうしてあなたさんと罪木さんは楽しそうに話していた。
すると、罪木さんは何か思い出したようにポケットの中を探してた。
罪木さんはポケットから2つのリボンを取り出した。
赤色のリボンは、あなたさんによく似合いそうだ。
そう言うと罪木さんは泣き出してしまった。
今日は泣く人が多いな。
そんな罪木さんに、あなたさんは手を取って「ありがとう」と言った。
罪木さんはあなたさんの両サイドの三つ編みを手に取って、優しく結んでいる。
本当だ、本当によく似合ってる。
ボクがそう言うと、あなたさんは顔を赤くしてしまった。
罪木さんが熱があるんじゃないかと慌てていたけど、そうじゃない事くらいボクにもわかる。
またあなたさんは黙り込んでしまった。
こうして意地悪をしてしまうのは、あなたさんが可愛いせいでもあるんじゃないかな…。
本当にあなたさんはボクを狂わせる。
後ろから突然、十神クンの声が聞こえた。
十神クンの事だから、またボクとあなたさんを引き離すんだろうな。
そう言うと、あなたさんは厨房の方へ向かおうとした。
そしたら、丁度辺古山さんが大広間に入って来た。
ボクはぶつからないように、あなたさんの腕を引っ張ってしまった。
辺古山さんもあなたさんも驚いた顔をしていた。
辺古山さんに手を振って、あなたさんは笑っていた。
すごく嬉しそうで、すごく楽しそう。
辺古山さんが行った後、あなたさんの後ろに居たのは七海さんだった。
七海さんは一言二言交わして、あっさりと行ってしまった。
そう言って、ボク達はボク達の行くべき場所に進んだ。
あなたside>>
なんだこの人、とてもうるさい。
出会った頃からずっと思ってたけど、本当にうるさい。
悪気はないんだろうけどさ。
さっきからずっと私の周りウロウロしてるし…本当…はぁ。
あの味が、私の口の中に思い出と一緒に広がってく。
目を閉じると、あの日の事をよく思い出す。
私が日向家に引き取られて間もない頃、どうしても心が開けなかった私の為に兄ちゃんはオムライスを作ってくれた。
その日から、私はお兄ちゃんっ子だ。
私に歩み寄ってくれて、この人はいい人なんだって安心させてくれた。
そう言うと、花村くんは冷蔵庫から卵を出して、フライパンを持っていた。
何だろうと思っていたら、私の方にどんどん近づいてくる。
そうして私達はオムライス作りを始めた。
1番は心を込める事、相手の喜ぶ顔をよく想像するんだって。
温めたフライパンに油を敷いて、掻き混ぜた卵を流し込む。
ジュウジュウと美味しそうな音を奏て、ただのライスがフライパンの上でドレスチェンジしてる。
なんだかそれが面白くって、笑っちゃう。
料理ってこんなに楽しいんだなんて、初めての経験だった。
そうして私達は出来上がった料理と一緒に大広間に運びに行った。
すっかり料理の虜になった私は、花村くんに料理のコツや、簡単なレシピを聞いた。
料理は全部花村くんが持ってくれたから、私はメモをちゃんとかけた。
レシピを聞いている内に大広間に着いた。
花村くんは「大丈夫だよ」と私の作ったオムライスを渡してくれた。
わかってるよ。
兄ちゃんは私の作った物を絶対に捨てずに取っておく人だから。
最初それを知った時はびっくりしたっけか。
私が兄ちゃんにオムライスを渡すと、兄ちゃんは驚いた顔をしていた。
スプーンを差し出すと、ありがとう、と笑顔で受け取ってくれた。
狛枝くんはオムライスの上にベーコンが丸々ひとつ乗っかっているのが新鮮だって言った。
兄ちゃんが「これは俺が作った初めての料理なんだ」って言ったら「だからこんなに斬新なんだね!」って笑った。
みんなを笑顔にできる料理って、凄いな。
みんなを幸せにできる人になれた気がした。



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!