私は狛枝くんの顔を見た。
悲しそうで、寂しそうで、今にも泣きそうな顔をしていた。
どうしてそんな顔をするの?
どうして今にも消えそうな顔をするの?
なんで何も言ってくれないの。
そう答えると、狛枝くんは私の手を握った。
強く、でも優しく、私も握り返した時だった。
「バチン!」と音がして、目の前が真っ暗になった。
怖い。
暗くなるとあいつが来るんだ。
私の腕を引っ張って、引きずってでも連れて行かれる。
蹴られる、殴られる、罵声と吐息だけが響くあの空間。
ブレーカーが落ちただけ、それだけなのに。
落ち着いて…落ち着いてよ!!
隣で声がしたような気がした。
手に温かい感覚がする。
そうしているうちに、明かりが戻った。
そう言って、私を抱きしめてくれた。
冷たい物が溶けたみたいに、温かくなる。
狛枝side>>
あなたさんを抱きしめる。
今のボクに、これは許される事だろうか。
日向クンにそう言われて、ボクはあなたさんを解放する。
ボクがあなたさんを離すと、直ぐに日向クンがあなたさんを引き寄せた。
もう少しあのままで居たかったな。
すると、あなたさんが周りを見渡した。
みるみる青くなっていくあなたさんの顔を見て、罪木さんが慌てている。
違う、あなたさんは何かに気づいた。
何に気づいたの?
ボクは日向クンが抱いているあなたさんに近寄る。
日向クンは嫌がったけど、なんて言ってるか聞くには近寄らないと聞けない。
ボクのその言葉に何度も頷くあなたさん。
良かった、聞こえてはいるみたい。
上手く話せてない。
相当困惑してるからなのか、目線も定まってないように見える。
そう叫んだ瞬間、みんなはハッとした様子で辺りを見渡していた。
確かに、十神クンが居ない。
日向クンがそう言うと、あなたさんは目を見開いて、日向クンの腕を引き剥がした。
怒ってる…のかな。
突然始まった兄妹喧嘩に、ボク達は静かにそれを眺めていた。
あなたさんがこんな事を言うなんて、みんなそう思ってる。
そう言うと、みんな何かしらの文句を言いながら指示された場所へ向かって行った。
あなたさんは、みんなに指示をした後、力尽きたように壁に寄りかかって目を閉じてしまった。
ボクがそう声を掛けると、あなたさんはゆっくり目を開いてボクの目を眺めてる。
この様子だと、相当疲れてるっぽいや。
そうして、ボクも十神クンを捜しに行く事にした。
本当に、ごめんね。
あなたside>>
私は蜜柑ちゃんに看病してもらいながら、終里さんが食べているのを眺めてた。
頭が痛い。
ジンジン響くような、あの嫌な痛み方。
私は目を閉じて1度冷静になろうとする。
でも話すのもつらい。
息切れが続く、私はどうなるんだろう。
まさか、こんなに進行してるとは思ってもみなかった。
トラウマがどんどん悪化してきてる。
鎖がどんどん長くなるみたいな、重りが増えるような。
そう言うと、蜜柑ちゃんは注射器を取り出して、鎮静剤を私の腕に刺した。
もう何が何だか分からなくて、私は涙が出てきた。
蜜柑ちゃんは私を抱きしめると、泣き出してしまった。
鎮静剤のおかげもあって、私は少しずつ落ち着きを取り戻してきた感じがする。
改めて周りを見渡してみると、私は卓上ランプの異様さに気づいた。
すると突然、食事をしていた終里さんが私達に声をかけてきた。
私はみんなが一通り話し終わったのを聞いて、私の推理は確信になった。
もうここしかない、みんなで確認しないといけない。
現実を見なければ…ならない。
私は1番奥の、卓上ランプのあるテーブルまで辿り着いた。
手が震えた。
見たくない、私も心が痛かった。
つらく、絶望的な現実を受け入れなければならない。
私がやらねば、誰がやると言うの。
私は自分を鼓舞して、テーブルクロスを掴んだ。
もう決めたでしょ。

そうして、私はテーブルクロスを一気にめくり上げた。
私はその光景を目に焼き付けた。
“超高校級の御曹司”十神 白夜さんの変わり果てた姿を。
私は、背中に響くみんなの困惑と悲鳴を受け止める。
かつての“仲間の死体”に、私は涙が浮かぶのがわかった。
あんなに私を気にかけてくれた十神さんが、どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんだろう。
どうしてこんなにも良い人が死んで行くんだろう。
私達は裁かなきゃいけない。
審判を下す人にならなければ。
例えそれがどんな結末を迎えようとも。
この血の量は半端じゃない。
こんなことをさせて、モノクマは何がしたいの?
みんな同じ事を思ってるはず。
現実逃避したいだけなんだ。
どうして向き合ってくれないの?
仲間の死だよ?
ちゃんと、ちゃんと向き合おうよ。
私は無性に腹が立った。
どうしてこうも人間は愚かなのか。
それでも、美しい。
汚れ役は私だけで十分だ、もう汚れてる身なんだから。
大丈夫、これはまだ私だ。
大丈夫、私は大丈夫。
自分を見失ってはいけない。
みんなは下を向いたまま、何も話さなくなった。
きっと、自分の中でちゃんと受け入れる為に整理してるんだよね。
モノクマはそう言うと、あのチャイムを鳴らした。
「死体が発見されました!一定の捜査時間の後『学級裁判』を開きます!」
学級裁判。
そんな、ゲームのような事をやらされるのか。
モノクマはご丁寧にもう一度学級裁判についてを解説している。
そう思い込まされてる時点で、私達は犯人に追い込まれている。
私達の命と、クロの命を天秤に賭けた裁判はもう始まっているのか。
私は狛枝くんの手を握って、狛枝くんの額を私の額にくっつけた。
最初の時も、あの時も、私をずっと見捨てずに向き合ってくれた狛枝くんのように。
最初は驚いたような顔になった狛枝くんも、だんだん落ち着いて来たように見えた。
こんな絶望的な状況の中でも、私達は負けない。
絶望的な現実と戦わなくちゃいけない。
生き残る為にはそれしかない。

























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。