第54話

孤独な少女の過去(続)
620
2020/05/29 08:01
どれぐらい走っただろうか。
もう、何も考えられないくらいだった。



















家に戻るとただいまと偽りの笑顔で妹が言った。
パチン!!
その瞬間私の中の何かが切れた。そしてふと下を見ると頬を赤くした妹が涙目で私を見ていた。
「大丈夫!?」
母が言った。
雅
お母さん……私…
パチン!!!
また音が鳴り響いた。さっきよりやや大きい音が。
その瞬間私の左頬がじんじんと痛む。頬を叩かれたのだ。
そのあとは妹に何してるのだの姉だろだのなんだのかんだのぐちぐち言って母は私をおいてリビングに行ってしまった。
頬をつたうこれはなんだろう。込み上げてくるこの感情はなんだろう。いつの間にか私は、私の知らないところで私では無くなっていた。

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