弟は口を尖らせながら、私を軽く睨むようにして見つめてくる。
純粋に疑問をぶつけると、弟は不満そうな表情のまま言った。
唐突に好きだと言われ、慣れていないせいで頬が紅潮する。
弟はそれに気を良くしたのか、意地悪そうに笑った。
弟は私の顎を掴み、顔をそらせないように固定する。
至近距離で見つめられ、頬がさらに紅潮していくのがわかる。
いったいなにがしたいんだよこいつは。
私は無理矢理顔をそらそうともがくが、弟の力に敵うはずもなく...。
顔を固定されたまま、耳元で甘く囁かれた。
テノールボイスが耳に心地よいなんて思ってしまい、そう考えている自分が恥ずかしくなる。
言われるがままに目を閉じると、ふに、と唇になにかが触れた。
驚いて目を開けると、目を閉じている弟の顔がドアップ。
相変わらず睫毛長いな...じゃなくてっ!
急いで離れようとすると、弟はそれを察したのか、逃がさまいといわんばかりに後頭部に手を回してきた。
いや待てここ教室だぞ。
いくら誰もいないからって、さすがにダメでしょーが。
強引なキスになにもできず、されるがままになる。
一旦唇を離れたかと思うと、また重なる。
ちゅ、ちゅ、とわざとらしくリップ音を響かせながら、弟は噛み付くようなキスを繰り返してくる。
唇が離れた直後に言うと、弟は目を獲物を狙う野獣のようにギラつかせた。
そう言うと、再び荒々しいキスを繰り返してくる。
爆豪くんの話したのが間違いだったかも...。
そう思いながら、弟のキスに耐え続ける。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。