第344話

No.342
9,194
2021/01/18 09:05
自室でレイに餌をあげていると、隣で座っていた弟が口を開く。







轟焦凍
今日、星が綺麗みたいだぞ
あなた
そうなの?







星という言葉に反応する私に、弟は頷く。







あなた
ならちょっと見てこようかな。ベランダじゃなくて外に出てさ
轟焦凍
俺も行く
あなた
行くんなら上着取っておいでよ。外ちょっと寒いから
轟焦凍
うん







私は星を見るのが好き。





趣味に天体観測はかかせないんだ。





いろんな星座を見つけるのが楽しいってこともあるけれど、一番は星を見てると心が洗われるような気がするからだ。





なんか落ち着くんだよね。





弟が上着を持ってきてから、1階に降りて玄関に向かう。





外に出ると、ピュウッ、と少し冷たい風が頬を撫でた。





天体観測は好きだけど、寒いのは苦手だ...。







轟焦凍
さみぃのか?
あなた
まあ、少し...







そう言いながら歩いていると、ぐいっ、と腕を引っ張られた。





と、







あなた
...







ふわ、と周りが少し温かくなったように感じて、思わず隣にいる弟を見上げる。





弟は私の視線に気がついたのか、目を合わせたまま言った。







轟焦凍
こっち(左側)いればあったかいだろ?だから今は、俺から離れんな







そう言って、私の肩を自分の方へと抱き寄せる。





そういえばこいつ、左側であっためることできるんだっけ。





夏は右側で涼しくできるし、冬は左側で温められるし。





人間エアコンじゃん。





まあ、今は寒いことには変わりないから、左側を堪能させてもらおう。







あなた
...ありがと
轟焦凍
おう







自分で個性を使ってもよかったんだけれど、この時期になってくるとどんどん調整が難しくなってくるんだよね。





弟のように半分氷結とかだったら、少しは違ったのかもしれないけど。





まあ、冬が苦手なことは確かだ。







轟焦凍







弟が空を見上げたまま、声を上げた。







轟焦凍
見ろあなた。流れ星







つられて空を見上げてみれば、確かに流れ星が見えた。





流星群とまではいかないけど、それでも綺麗なことには変わりない。







轟焦凍
綺麗だな
あなた
そうだねぇ







と、再び冷たい風が吹き、私は体を震わせる。







轟焦凍
...あなた
あなた
なに?
轟焦凍
これ着てろ







そう言って弟は、自分の着ていた上着を脱ぐ。





そのまま上着を、私の肩にかけてきた。





確かにあったかいけど...。







あなた
それじゃあ焦凍が寒いでしょ?私はいいよ
轟焦凍
今震えてただろ。いいから着てろよ、俺は別に寒くねぇ
あなた
でも、
轟焦凍
病み上がりなんだから、体冷やしちゃダメだろ。俺は左で体温調整できるから問題ねぇよ
あなた
...わかった







素直に頷くと、弟は柔らかく微笑んで私の頭を撫でる。





でも、やっぱり弟は寒そうに見えて...。





耐えられなくなった私は、弟の手を掴んだ。





弟が驚いたように私を見つめる。







あなた
こうしてれば、寒くないでしょ
轟焦凍
...そうだな、あったけぇ







繋がれた手は、やっぱり温かい。





私たちはそのまま手を繋いで、しばらく星を眺めていた。

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