自室でレイに餌をあげていると、隣で座っていた弟が口を開く。
星という言葉に反応する私に、弟は頷く。
私は星を見るのが好き。
趣味に天体観測はかかせないんだ。
いろんな星座を見つけるのが楽しいってこともあるけれど、一番は星を見てると心が洗われるような気がするからだ。
なんか落ち着くんだよね。
弟が上着を持ってきてから、1階に降りて玄関に向かう。
外に出ると、ピュウッ、と少し冷たい風が頬を撫でた。
天体観測は好きだけど、寒いのは苦手だ...。
そう言いながら歩いていると、ぐいっ、と腕を引っ張られた。
と、
ふわ、と周りが少し温かくなったように感じて、思わず隣にいる弟を見上げる。
弟は私の視線に気がついたのか、目を合わせたまま言った。
そう言って、私の肩を自分の方へと抱き寄せる。
そういえばこいつ、左側であっためることできるんだっけ。
夏は右側で涼しくできるし、冬は左側で温められるし。
人間エアコンじゃん。
まあ、今は寒いことには変わりないから、左側を堪能させてもらおう。
自分で個性を使ってもよかったんだけれど、この時期になってくるとどんどん調整が難しくなってくるんだよね。
弟のように半分氷結とかだったら、少しは違ったのかもしれないけど。
まあ、冬が苦手なことは確かだ。
弟が空を見上げたまま、声を上げた。
つられて空を見上げてみれば、確かに流れ星が見えた。
流星群とまではいかないけど、それでも綺麗なことには変わりない。
と、再び冷たい風が吹き、私は体を震わせる。
そう言って弟は、自分の着ていた上着を脱ぐ。
そのまま上着を、私の肩にかけてきた。
確かにあったかいけど...。
素直に頷くと、弟は柔らかく微笑んで私の頭を撫でる。
でも、やっぱり弟は寒そうに見えて...。
耐えられなくなった私は、弟の手を掴んだ。
弟が驚いたように私を見つめる。
繋がれた手は、やっぱり温かい。
私たちはそのまま手を繋いで、しばらく星を眺めていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。