第8話

僕は何処へも行かないよ
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2024/08/23 10:37 更新
      私の部屋のノックの音がした
山中綾華
山中綾華
はーい


     入ってきたのはお母さんだった
山中敬子
山中敬子
おせっかいかと思ったんだけど…
山中敬子
山中敬子
お父さんがね、考えてもいいんじゃないかって



    渡されたのは美大のパンフレット
山中綾華
山中綾華
……ありがとう
山中綾華
山中綾華
でも…
山中綾華
山中綾華
やっぱり、今更美大を目指すなんて…
山中綾華
山中綾華
無理だよ
山中敬子
山中敬子
………


































        ある日の放課後。



 私は彼と2人で勉強をする合間に絵を描いていた



       
山中綾華
山中綾華
あ!ちょっと…!
大森元貴
大森元貴
余裕じゃん
大森元貴
大森元貴
……
大森元貴
大森元貴
うまいな
山中綾華
山中綾華
中学のとき美術部でさ
山中綾華
山中綾華
コンクールに入賞したこともあるんだよ
山中綾華
山中綾華
返して
大森元貴
大森元貴
そっか…!
大森元貴
大森元貴
そういう一度身についたことって
大森元貴
大森元貴
簡単にはなくなさないものだよね
山中綾華
山中綾華
そうなのかな?
大森元貴
大森元貴
それ、「手続き記憶」っていうらしい!
山中綾華
山中綾華
手続き記憶?
大森元貴
大森元貴
自転車の乗り方とか、感覚的に体が覚えてる記憶のことをいうみたい
山中綾華
山中綾華
それって、忘れないものなのかな?
大森元貴
大森元貴
この間久しぶりっていってたけど
大森元貴
大森元貴
自転車乗れてたでしょ?
大森元貴
大森元貴
絵だって
大森元貴
大森元貴
それと同じじゃないかな
大森元貴
大森元貴
体がちゃんと覚えてるから
大森元貴
大森元貴
描けば描くほど上手くなるはず
山中綾華
山中綾華
手続き記憶……か……
大森元貴
大森元貴
だから
大森元貴
大森元貴
もっともっと描いてみなよ!










       昨日の記憶がなくても








        絵は上達するって








        こんな状態の私でも









 何かを続けることができるって教えてくれたんだ








      この目に映った元貴くんを








      明日の私に見せてあげたい








      その一心で彼を描き続けた










大森元貴
大森元貴
これ
山中綾華
山中綾華
……!!!






   彼は私の毎日に一筋の希望を与えてくれる
山中綾華
山中綾華
元貴くんは疲れて寝てしまったようです!




   私の1日は、絶望的な気持ちで始まるのに








 彼と一緒に過ごすうちに、幸せな気分が満ちていく








 蓄積されない記憶と、残っていくかもしれない何か

















日記の中の私は、彼のことを本気で好きになっているみたい

















         そして私は_____










       今日も彼に会いにいく















    「昨日の私の分まで楽しんできてね」














大森元貴
大森元貴
あ…!髪飾り…
山中綾華
山中綾華
気づくの遅くないですか?
大森元貴
大森元貴
すごく似合ってる
山中綾華
山中綾華
……








   彼の背中を見ると、消えてしまいそうで








       私は彼の手を握った













 また幸せが溢れて、私の記憶が追いつかなくなる
















        こんな大事な一瞬も










        私は忘れてしまう












         この温もりも









       私は忘れてしまうんだ
山中綾華
山中綾華
……忘れたくない……
山中綾華
山中綾華
……忘れたくないよ……



       元貴くんが私の涙を拭う
大森元貴
大森元貴
忘れないよ
大森元貴
大森元貴
どんな記憶も
大森元貴
大森元貴
完全に消えるわけじゃないよ
山中綾華
山中綾華
どこにもいかないでね、元貴くん
大森元貴
大森元貴
僕はずっと…
大森元貴
大森元貴
山中のそばにいるから
山中綾華
山中綾華
ごめん
山中綾華
山中綾華
元貴くん…
山中綾華
山中綾華
私…
山中綾華
山中綾華
3つ目の約束、破ってもいい?
大森元貴
大森元貴
…………
大森元貴
大森元貴
僕は
大森元貴
大森元貴
とっくに破ってる








      彼の唇と私の唇が重なる









  それがキスだとわかるまでの時間は容易かった

















         お願いです















     人に出来るだけ優しくします











    


     わがままも言いません、だから


















  これからも、彼のそばに居続けられますように

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