店の中に入ると、もう飲み始めている奴らがいた
おつまみをつまみながらそう言ってきたのは、切島の隣に座ってにやにやしてるかっちゃんだった
悪い悪い、と頭を搔く切島の向かいに座ると、瀬呂がメニューを取ってくれた
明日は大事な仕事があるから、とお酒は控えてレモンソーダを注文した
あれから5年。
私達は雄英を卒業し、晴れてヒーローになったのだった
みんなサイドキックになったり、自分の事務所建てるために経験積んでたり、、
忙しくなってあまり合わなくなって、クラスみんなで集まることはあんまり無くて、でもたまに任務先であったり、チームアップしたりでなんだかんだ数人はよく顔を合わせたりする
そんな私達はたまにこうやって上鳴が声をかけてくれたりして飲んだりしている
5人でこうやって集まったのは3月あたまにクラスで集まった時以来で、なんだかんだ言って1ヶ月ぶりくらいだ
とは言うものの、なんだかんだHNで活躍を聞いたり、テレビで姿を見るからあんまり久しぶりの感じはしない
5月の今の時期、どこの会社も新歓とかで飲み会が多発しており、それなりに顔が知れてる人もいるので個室を借りるしか無かった模様、
そのお陰か、皆は物凄く賑やかで楽しそう
到着したレモンソーダを少し飲んで一息ついた
ヒーローと呪術師合同機関って、
5年前のあれがあってから今まで通りの生活にそのまんま戻ったか、っていわれたらそんなことはなくて
良華先輩が結んだ縛りは宿儺を虎杖に固定するものであって、宿儺を殺した訳では無いから今でも虎杖の中に宿儺は生きてる
でもいつか虎杖も何かしらで死ぬわけで、その時に宿儺がどうなるのか
一緒に死ぬのか、それとも完全再現してしまうのか、違う人を器とするのか
どうなったって宿儺の恐怖が消える訳でもなくて、呪霊はあの日から若干身近な存在になってて、個性との境目がはっきりとではなくなった
だから、ヒーローや呪術師がヴィランか呪詛師、呪霊か、で生死が左右されないように、対応できる術を持つべきだと思う
それを育てるための事務所こそが、五条さんや虎杖達に手伝って作ったこの事務所だ
私がファットガムのところでサイドキックをしていたのは、もちろんファットさんのところに行きたかったのもあるけど、経験値を増やすため、そして、名前を売るため
有名な事務所のサイドキックってなればそれなりに知名度は上がる
知名度のない事務所なんて作ってもすぐ潰れるんだから、先に売っといたんだ
その後もおつまみを沢山頼んだりして、仕事の話からプライベートの話まで長々と話していた
普段の仕事はやり甲斐がある分、勿論とても大変で、
今なんか沢山並行して行っているからかこうやって賑やかに喋ってることがとても楽しい
かっちゃんがそう言うとその他の3人も面白そうに笑った
なんて、こうやって笑いあったり、冗談言い合うのが私たちが飲んだ時の当たり前で
居心地が良くて
ここが大好きだ
そして必ず、飲み始めて3時間程、みんながいい感じにお酒が回ってきた時に
5年前の話になるのだ
5年前、
私が起きたのは決戦が全て終わった1週間後だった
体力が残ってなかった私はリカバリーガールの力を使えなくて、ただただ良くなるのを見ることしか出来なかったらしい
やっと家入さんが到着して反転術式を使えたからよかったものの、家入さんがいなかったら植物状態になってもおかしくなかっただとか
まあそれもその筈、私のお腹には直径10センチ程の穴が空いていて、その上長い間放置して動き回ってたから悪化して、やばいほどの血を流してたお陰で、あの時生きていたのが奇跡ぐらいだったらしい
起きてみれば、ベットの横に五条さんが居たのは覚えている
五条さんは忙しいお兄ちゃんに変わって私が起きるまでずっと見ててくれて、私が起きたあとも虎杖達を呼んでくれたりした
少ししたらホークスが目に涙を浮かべながら「死んだかと思った」なんて言いながら来てくれた
その日のうちに面会謝絶で会えなかった瀬呂達も会えた
でも、検査をしてみたら、私の足はもうボロボロだった
しばらく動かせるようなものでは無く、動かせたとしても飛んだり跳ねたりは無理だ、とキッパリ言われてしまった
それに、お腹に穴が空いたことで内蔵を損傷してしまって、今まで通りの生活までは長い間のリハビリを余儀なくされた
リカバリーガールの治療を受けたところで、それに体が耐えられるかが分からないからリカバリーガールの治療を受けることは出来なくて
何日も何日も部屋で泣いた
お母さんもお父さんも亡くしてしまった上に、ヒーローという夢まで奪われてしまっては、私はもう何もする気になれなくて
五条さんやお兄ちゃんが話をしよう、って言ってくれたけど、
話をすればもっと自分の夢を諦めなくてはならない現実を押し付けられる気がして、
お父さんにせっかくあんな言葉を言って貰えたのに
私はもう何も出来ないのか
そんな時だった
かっちゃんと出久が私の部屋にやってきて資料を見せてきた
もしも、どうしてもまだヒーロー活動を続けたいのなら、
腕の自由は保証されないけど足が治る確率が上がる手術がある
と教えてもらった
その眼差しは真剣そのもので、
私はその手術を受けたいとお兄ちゃんと五条さんに伝えたのだった
もちろんお兄ちゃんに断られたよ。
だって失敗すれば腕も足も使えなくなる代償付の手術なんて、危なすぎるから
でも私はヒーローになれないくらいなら腕も足も要らない
逆に言えばヒーローになれる確率が少しでもあるなら、それに賭けてみたかった
少しの間話し合っていたけど、やっぱりお兄ちゃんだけは「だめだ」の一点張りで、
私も唯一の家族をこんなふうに傷つけてしまうくらいなら諦めた方がいいのか、とも考え始めた時だった
家入さんが帰国したおじいちゃんと一緒に私たちの元へとやってきた
まさかまさかのおじいちゃんの登場に驚いきを隠せなかった
話を聞いてみれば、手術には賛成派だった五条さんが、家入さんに頼んでおじいちゃんに帰国してもらうよう伝えたらしい
なんでおじいちゃんの帰国が必要だったのか、
それは、おじいちゃんもその手術を行う技術を持つ数少ない医者だったから
おじいちゃんは私の手術をするつもりで、リスクをありのままにお兄ちゃんに話した
その話を聞いてるあいだのお兄ちゃんは泣きそうな顔をしていたけど、最終的に了承をしてくれた
6月に行われた私の手術は、執刀医をおじいちゃんがしてくれて、
長い時間をかけた難しい手術だった
手術の結果はすぐには分からなくて、手術が終わってから3ヶ月間、キツイリハビリが始まった
まずは起き上がるところから始まって、少しづつ立ち上がるようになったり、腕を上げるリハビリをしたり、
全く使えなかった腕と足が少しづつ使えるようになったのは、リハビリを始めてから1ヶ月程だった時だった
それでも少しの距離を歩ける程のもので、走り回るにはもっと沢山の時間を要した
6月中旬から始まった授業にも勿論参加することは出来ず、瀬呂が録画してくれた授業動画をひたすらに見ていた
リハビリはめちゃめちゃしんどくて、心が折れかけた時があった
それでも続けられたのは、毎日のようにお見舞いに来てくれるクラスの友達、虎杖達、そして、隣の部屋で同じくリハビリを続けていたかっちゃんと出久がいたから
かっちゃんと出久も体を粉にしながら戦ったお陰で、私よりも酷い怪我をしたいたらしく、お兄ちゃんが担当を持ってリハビリを続けていた
たまに気分転換に五条さんが外に連れ出してくれた時はとても楽しかったし、万全に戻ったホークスに抱えられて空の散歩に連れていってもらったのもとても元気が出た
相澤先生も同じ病院に居たため、たまに授業の分からないところを聞きに行ったりして、勉強には遅れを取らずにリハビリを続け、
3ヶ月経った時、やっと走れるぐらいまでには動けるようになったため、寮に戻ることが出来た
寮には戻れたものの、授業には復帰できない私は、昼間は寮で1人でリハビリしたり、えりちゃんと遊んだりしていた
かっちゃんと出久が帰ってきたのはその2週間後で、2人は寮に帰ってくるなり早速授業に復帰していった
地道なリハビリを続け、やっと個性が使えるようになり、普通に走り回れるようになったのは、私が高2の12月だった
お兄ちゃんは泣いて喜んでくれて、その年はクリスマスは寮で過ごし、お正月は新しく引っ越した私たちの家でお兄ちゃんと一緒に過ごした
三が日丸々休みだった私達は、1月2日、出てノンビリしていて、そこに五条さん率いる高専生が私たちの家へと遊びに来た
2年の先輩も虎杖達とも賑やかに過ごして、お兄ちゃんと五条さんほホークスを呼び付けて、3人ともお酒は仕事の都合であまり飲めないから炭酸なんかを飲んだりして喋り倒していた
3年になった5月、体力も元に戻りつつあった私はファットさんのところのインターンを再開し、ヒーローへの活動を本格的に再開したのだった
今でもリハビリを少ししていて、キツい任務があった日なんかは少し痺れたり、腕が上手く動かなかったりする
そういう時はお兄ちゃんの病院に行って見てもらってる
でしょ?!
と言いながら机に突っ伏してる上鳴はお酒をグビっと飲んだ
そう言う上鳴を横目で見ながらかっちゃんもお酒を飲むと、スマホの画面を開いて何かを確認した
騒がしくなった上鳴達を見ながらかっちゃんに目を移すと電話がかかってきたのか外に出て行った
しばらくするとかっちゃんは帰ってきて、どこかにメールを送ったあと酒を片付けるように一気飲みした
時計を見てみると案の定23時を回っていた
瀬呂がまとめてお会計をしてくれたおかげでスムーズに店を出ることが出来た
数分その場で待ってると、黒い車が私達の前にとまった
そして、みんなを駅に送っていったあと、お兄ちゃんが運転する車に乗ってる私とかっちゃんは家へと向かっていた
大人っぽくなったこんな話をしながら少しした頃には見覚えのある景色が見えてきた
荷物を取りだしたかっちゃんはヒラヒラと手を振った
家の方向に歩いていくかっちゃんを見送って、私たちも家へと向かった
今は大阪で事務所の寮みたいなところに住んでるんだけど、たまにこうやって帰ってきた時には家へと帰ってきている
家、というのは前の私たちの一軒家があった場所で、
お兄ちゃんが新築を建てた
前よりも綺麗になったこの家は、お兄ちゃんがなんかのこだわりがあるのか、昔の家と似たような作りをしている
お陰でこの家は昔の家みたいでとても落ち着くし
ちゃんとお父さん達の部屋だった場所も空室のままある
二階の部屋の私の部屋に荷物を置いたあと1階に降りると、ダイニングにはパソコンといくつもの資料が散らばっていた
資料を拾い上げて見てみると、やっぱりヴィラン犯罪による死亡ケースの減少目的資料だった
部屋に戻ると
部屋はちゃんと掃除をされてるらしく、ホコリは全く被ってなくて、
壁には雄英の制服が壁にかかっていた
机の上を見てみると、
ホークスか五条さんがここに来た時に置いていったのか
1つ香水が置いてあった











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。