第66話

閑話【幹部にならない。】
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2024/06/12 08:00



此はポートマフィアで幹部の補佐を
勤めていた時のある会話の一部始終である。







私が何時も通り報告書を纏め、
執務室の幹部に最終確認して頂いている時だった。




太宰治
君も可哀想だよね。

太宰幹部が突然私に投げ掛けた
“可哀想”という言葉の真意が判らず

思わず首をかしげた。
あなた
…と、言いますと?
 
私がそう太宰幹部に問いかけると

太宰幹部は手元の資料から目を離さず言葉を続ける。
 
太宰治
君の能力はマフィアの中でも異質だ。
 
太宰治
情報処理能力、反射神経、体術…
どの数値においても高成績だ。
 
太宰治
にもかかわらず、君は私という上司が居る所為で幹部補佐という立場止まりだ。
太宰治
可哀想にねぇ。
 
そう言って幹部は話を終えたように
口を閉じて書類の確認を行う。



しかし私はふと疑問を抱いたため、
再び幹部に質問をした。
 



あなた
何故、太宰幹部が私の上司であることで私が“可哀想”になるのですか?


私の問いかけに幹部は一瞬動きが止まり、

そして呆れたように大きなため息を付く。

太宰治
はぁ~君ねぇ、それわざと言ってる?
 
太宰治
目の上のたんこぶというやつだよ。
太宰治
私が居る限り、
君は幹部に昇進することはない。

その時、私は初めて幹部が
昇進を前提とした話・・・・・・・・・をしていることに気がついた。





あなた
幹部。失礼ながら
口を挟ませて頂くと、
あなた
私は幹部になれない訳ではなく、
ならない・・・・だけです。
 
太宰治
おや、随分と偉い発言だねぇ。
 
太宰治
訳を聞こうじゃないか。


幹部は先程まで書類に向けていた目を此方に向けた。


その目は一切の光を灯さない暗闇であり、
捕らえた獲物を逃がすまいという信念も感じられた。


あなた
ポートマフィアでは
首領のお言葉が全てであり、
それに続くのが五大幹部です。
 
あなた
もしマフィアと敵対を企むものが現れた場合、その者は首領や五大幹部を潰すことを考えるでしょう。
 
太宰治
成る程。
 
太宰治
その点、先ず幹部補佐という
立場が狙われる可能性は低い。
太宰治
しかし、幹部に発言する
影響力は持ち合わせている。
 
太宰治
私は君の“安全”に利用されている訳だ。
 
幹部はそう言って黒い笑みを浮かべる。

心を凍りつかせるようなそれを大抵の人がみたら、
逃げ出すことや自害を選ぶらしい。


太宰治
しかし、君の腕は確かだ。
太宰治
君が持ってくる書類は
完璧という言葉に尽きる。


幹部は先程私が持ってきた書類を
可笑しそうにひらひらと扇いだ。

僅かな風の流れが生まれ、幹部の髪が揺らぐ。
 
太宰治
面白いじゃあないか。
 
太宰治
此からも私の幹部補佐として
頼むよ、あなた。
あなた
はい。幹部の仰せのままに。


幹部に深々とお辞儀をして、執務室を後にする。











太宰幹部との、たったそれだけのお話。





閑話「幹部にならない。」 完
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前回たくさんのコメありがとうございました😭




生憎、一昨昨日は忙しくてコメ返が出来ず、
日付変わってからコメ返したら迷惑かな…と
返信出来ず終いになってしまいましたが

全部ちゃんと読んでます🙏🙏!!




暗号に挑戦してもらえてるのも嬉しいし、
絵についてのコメも嬉しすぎました…🥲





此処ぞとばかりの宣伝みたいで難ですが
主、イラスト部屋があるので
善かったら見てもらえたら嬉しいです…💓

_______以上、みみみより。

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