リョウガは、基本的に崩れない。
体調も、感情も、ペースも。
無理をしていないわけじゃない。
ただ、無理のかけ方を分かっているタイプだった。
どこまでならいけるか。どこで引くべきか。
自分の中で線が引けている。
だから周りも、あまり心配しない。
「リョウガなら大丈夫」
それが、当たり前になっていた。
「今日、結構押してるよな」
ユーキが言う。
リョウガはタブレットから目を上げずに答える。
「まぁ想定内」
カイが苦笑する。
「それ毎回言ってるけどな笑」
タクヤが横から覗く。
「最近ドラマだよな?お前ちゃんと休んでる?」
「休んでるよ」
即答。
でも、その“休んでる”はかなり浅い。
短い仮眠と、空いた時間の目を閉じるだけ。
それでもリョウガにとっては“足りている側”だった。
移動の合間、次の現場まで少し時間がある。
「あ、ちょっとコンビニ寄れますか?」
タカシが聞き
スタッフが頷く。
車が止まる。
「俺行くわ」
リョウガが先に降りる。
「何かいる?」
振り返って聞く。
タクヤ「水」
タカシ「甘いの欲しくて」
カイ「任せた」
いくつか声が飛ぶ。
リョウガは軽く手を上げて、そのまま店に入る。
店内は明るい。
少しだけ目にくる。
(思ったより疲れてるか?)
そう思う。
でも、深くは考えない。
飲み物を手に取る。
かごに入れる。
パンもいくつか。
動きはいつも通り。
問題ない。
レジに並ぶ。
少しだけ、視界が狭くなる。
(あれ)
ほんの一瞬。
すぐ戻る。
気のせいだと思う。
袋を受け取る。
店を出る。
外の空気に触れる。
少し冷たい。
その瞬間、さっきよりはっきり違和感が出る。
足が軽くなる。
逆に、身体が重い。
バランスが合わない。
(これ、やばいかも)
頭のどこかで思う。
でも、まだ歩ける。
車まではすぐそこ。
数歩進む。
視界が一段落ちる。
色が薄くなる。
音も遠くなる。
「リョウガ?」
遠くで声がする。
ユーキの声。
振り返ろうとする。
でも、身体がついてこない。
袋を持つ手に力が入らなくなる。
少し傾く。
(あー、これ)
はっきり分かる。
「おい!」
近づく足音。
その前に、身体の力が抜ける。
視界が白くなる。
地面に近づく感覚。
そこで、途切れる。
「リョウガ!」
ユーキが駆け寄る。
倒れる前に腕を掴む。
完全には支えきれない。
でも頭は守る。
「大丈夫か、おい!」
反応はない。
カイとタカシもすぐに外に出てくる。
カイ「え、どうした?」
「リョウガ?」
タクヤも後ろから来る。
「意識ある?」
ユーキが呼びかける。
反応がない。
でも呼吸はある。
「呼吸はあるな」
カイが確認する。
タクヤが言う。
「さっき普通だったよな」
「普通だった」
ユーキが短く返す。
タカシが少し低く言う。
「外でよかったな……」
車内だったら、気づくのが遅れていたかもしれない。
ユーキがリョウガの肩を軽く叩く。
「おい、リョウガ」
少し間があって、
「……ん、」
かすれた反応。
「聞こえてるか」
「……うん」
小さい返事。
その瞬間、全員の空気が少しだけ緩む。
「座らせるぞ」
ユーキとカイで支えて、ゆっくり座らせる。
タクヤが水を渡す。
「飲める?」
リョウガは少しだけ頷く。
口に含む。
それだけで十分だった。
「お前がこれやるの珍しすぎるだろ」
カイがぼそっと言う。
ユーキが苦笑する。
「ほんとそれな」
タカシが静かに言う。
「無理してたんやろ」
リョウガは目を閉じたまま、小さく息を吐く。
何も返さない。
否定できない。
でも、
それ以上に、
うまく言葉にできない。
⸻
少しだけ間が空く。
誰も責めない。
ただ、近くにいる。
その空気の中で、
急に、息が詰まる。
さっきまでの苦しさとは違う。
もっと奥の方。
抑えていたものが、
一気に上がってくる感じ。
(あれ)
自分でも分からない。
なんでなのか。
ただ、
止まらない。
呼吸が揺れる。
「……っ」
小さく息が漏れる。
ユーキがすぐに気づく。
「どうした」
リョウガは首を振ろうとする。
でも、
そのまま、
視界が滲む。
一滴、落ちる。
自分でも驚くくらい、自然に。
「……は」
うまく息が吸えない。
苦しいわけじゃないのに、
崩れる。
カイが少しだけトーンを落とす。
「大丈夫、大丈夫」
近すぎない距離で言う。
タカシも静かに続ける。
「そのままでええよ」
止めようとすると、余計に崩れる。
それを分かっている声。
リョウガは顔を少し伏せる。
涙が続く。
声は出ない。
でも、呼吸が揺れる。
タクヤ「たまには甘えろ」
責めるでも、慰めるでもない。
その言葉に、
リョウガは小さく頷く。
それだけで、
少しだけ楽になる。
カイがぼそっと言う。
「そのためにいるしね」
リョウガは目を閉じる。
呼吸が少しずつ戻る。
涙も、ゆっくり止まっていく。
全部が一気に抜けたみたいに、
身体の力が入らない。
でも、
さっきよりは楽だった。
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リョウガくんも最近リクエストを頂きありがとうございました!なかなか崩れないイメージがあったので、このお話にしてみました。メンバーの皆様、其々これからも元気な姿で居れることを心から願って。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。