第70話

💚タクヤ 寝不足   1話完結
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2026/04/23 15:04 更新
ーガールズアワード2026当日



タクヤside


朝から、時間は詰まっていた。

本来なら会場でリハーサルに入っているはずの時間。
タクヤは別のスタジオにいた。

撮影用の照明を浴びながら、カメラに向かってポーズを取る。

「いいね、そのままもう一パターン」

スタッフの声にすぐ応じる。

「はい」

身体は動く。表情も作れる。求められているものはきちんと返せている。ただ、眠くて頭が働かない。


昨夜はほとんど寝ていなかった。
移動と準備、細かい確認が重なって、自宅にはいたものの全てが終わった頃には朝に近く
そのまま今日が始まってしまった。


ここが終われば、そのまま会場に向かって本番。

リハーサルには参加できない。

それはもう決まっていた。

「これでラストです」

スタッフの声に頷いて、最後のカットを終える。
挨拶もそこそこに現場を出て、すぐにマネージャーの車に乗り込む。



ドアが閉まった瞬間、少しだけ力が抜ける。



シートに背中を預けて目を閉じるが、さっき送られてきていたガルアワのリハ映像が気になり眠れない。 

目を瞑りながらも、曲の流れの復習を頭の中で行う。
そのまま短い移動時間が終わり、会場に着く。






楽屋の空気は、いつもより少し早く仕上がっていた。

ユーキがストレッチをしながら言う。
「今日、まじのラストだなー!待機長いな」

カイが水を飲みながら返す。
「しかも今日のセトリ、最初から飛ばすやつだろ」

シューヤが笑う。
「後半ほぼ休みないやつね笑」

タカシが軽く肩を回しながら言う。
「テンション上げてくしかないなぁ〜」


その会話に、リョウガが短く相槌を打つ。


一通り準備が進んだところで、ユーキが周りを見渡す。
「あれ、そういばタクヤまだ?」


カイが時計を見る。
「撮影から直って言ってたな」

シューヤが少し眉を寄せる。
「リハ間に合ってないよね」


リョウガが静かに言う。
「来たら合わせるしかない」


責めるトーンではない。
状況をそのまま受け止めているだけ。




しばらくして、楽屋の扉が開く。




タクヤ「おつかれ」




タクヤが入ってくる。

ユーキがすぐに顔を上げる。
「おつかれ、間に合ったんだな!」



タクヤは軽く頷く。
「ごめん、ちょい長引いてリハ出れなかった」


カイが手を振る。
「大丈夫、流れいつもとほぼ同じ!」



シューヤも続ける。
「立ち位置だけさっき共有したやつ見といて!」



タクヤは短く答える。
「了解」

それ以上は聞かない。時間がないのも分かっている。
この後は急ぎでヘアメイク、衣装チェンジが待っている。


ユーキが少しだけ様子を見る。
「体調悪いとかは?」



一瞬だけ間があって、タクヤが答える。
「いける」

短い返事。

リョウガはそのやり取りを横で見て、何も言わなかった。
ただ、少しだけ視線を残す。




「んなら、ステージ袖で待ってるな!」

タカシの一言で、全員が動き出す。



袖に向かう途中、シューヤが小さく言う。
「今日まっじで削れるやつだよな〜」


カイが笑う。
「まあガルアワのトリだしな」


出番手前、タクヤがヘアメイクと着替えを終えやってきた。


ユーキが前を見たまま言う。
「タクヤ、無理すんなよ!」


その言葉に、タクヤは軽く返す。
「大丈夫大丈夫!」



その“いつも通り”が、逆に少し引っかかる。

でも、止めはしない。

止めてもやると分かっているから。



「まぁ、やるしかない」な。
タクヤは小声で呟く。

それは本音だった。

舞台袖の位置に着く。会場の音が近い。
歓声と低音が混ざった空気が、
ステージの向こうから押し寄せてくる。

一度、深く息を吸う。

浅い。

もう一度吸う。

さっきより少しだけマシになる。

いける、と自分に言い聞かせる。



暗転。

音が上がる。

ステージに出た瞬間、歓声がぶつかる。



タクヤの動きは問題ない。表情も出ている。

一曲目「POKER FACE」
二曲目「NINE LIVES」



ユーキが横目で確認する。
(ちょっと息上がってるけどまだ大丈夫だな)




三曲目「ウインクキラー」

強度が上がる。

ここで、ほんの少しだけ違和感が出た。

シューヤが気づく。
(タクちゃん、呼吸、早いな)



動きは崩れていない。でも余裕が薄い。

フォーメーションが近づいた瞬間、ユーキが小さく口を動かす。
「いける?」



タクヤはほんのわずかに頷く。

その頷きが、少しだけ小さい。




2曲目から感じていたが、息が足りない感覚。

吸っても足りない。




リョウガは静かに見ている。




四曲目「My Buddy」


タクヤは1番理解していた。
「(ここは俺が1番抜かれるとこだ。笑顔笑顔。)」



これまでも沢山乗り越えてきた。


少しだけ余白があるはずの曲。でも今日は違う。
呼吸の浅さがそのまま残る。

吸う。吐く。

リズムがうまく合わない。

足元がほんの少しだけ不安定になる。



曲がはじまってすぐ。
メンバー1人ずつの挨拶。
歓声が返る。

その空気とタイミングで一度整う。

でも、完全には戻っていない。



「タクヤでーす」
なんとか絞り出す。



カイが近くを通る瞬間に気づく。
(あいつ、足、ちょっときてるな)





センステへ移動するタイミングでユーキが低く言う。
「あと一曲」


タクヤが頷く。

声は出さない。


センターの回数、パート、注目されるため
表情に神経を集中させた。






そして迎えたラスト曲「超えてアバンチュール」



正直今日いまここでの超えアバが一番きつい。



リョウガが声を入れる。
「いくぞ!」


タクヤも前を強く見る。
動きは止まらない。



全員が分かっている。

ここで止める選択肢はない。




サビ。

熱が上がる。

歓声が強い。


そして、後半に頭を何度も振りまわす。

その中で、タクヤの呼吸が明らかに乱れた。


タクヤ「やべぇ…」



カイが一瞬だけ距離を詰める。
(崩れるならここだな)

でも、崩れない。

フラフラになりながらも最後まで持っていく。

最後の振り。

全員で止まる。

歓声。

光。

音。



「以上僕たちは!」
「超特急でした!」
「ありがとうございました!」




最後のカメラを通り過ぎた。


その直後だった。

タクヤの身体が、わずかに後ろに流れる。



「タクヤくん?」

すぐ後ろにいたマサヒロが手を伸ばす。



受け止める。

重さが乗る。

さっきまでと違う。




「大丈夫!?」

声が低くなる。
 


タクヤは背中を壁に預ける。

そのまま座り込む。
足に力が入らない。

さっきまで立っていたのが、不思議なくらい身体が重い。


「大丈夫大丈夫」
ごめん。とマサヒロへ伝えた。



誰かが言う。

「リハ来てないからだぞー」



「俺だって……参加…したかったわ」

小さく返すと、少しだけ笑いが起きる。

その空気が、ちょうどいい



持ってきてくれたペットボトルを口に運ぼうとした。



が。途中で止まる。



「あれ」
腕に力が入らない。



そのまま膝の上に落とす。

呼吸は少しずつ落ち着いてきているはずなのに、身体の奥の重さが抜けない。



だんだん視界がぼやける。

音が少し遠くなる。


「おい、ほんとに大丈夫か?」

近くでリョウガの声がする。



でも、返事をしようとしても、うまく声にならない。

「……ん、」

かすれた音だけが出る。

意識はある。

でも、繋ぎ止めていられない。





そのまま、身体の力が抜ける。

頭がゆっくりと横に傾く。

支えようとする手が一瞬遅れて伸びる。

「タクヤ?」

声が少しだけ近くなる。

でももう、そこに意識を向ける余裕がない。

呼吸は静かに続いている。

苦しさはもうない。

ただ、深く落ちていく感覚だけがある。

そのまま、舞台袖で座り込んだ姿勢のまま、

糸が切れたみたいに、

静かに眠りに落ちた。



様子がおかしくなったタクヤにリョウガが問いかける。
「タクヤ?……タクヤ聞こえてる?」


反応がない。



カイが言う。
「え?寝てる?」

タカシが首を振る。
「いや、違うやろ」

シューヤが確認する。
「頭ぶつけてないよな?」

ユーキが答える。
「大丈夫、当たってない」


マサヒロが呼吸を見る。
「……呼吸はちゃんとある…よ?」

少しだけ空気が戻る。



リョウガが静かに言う。
「これ完全に切れて寝てるわ笑」



カイが息を吐く。
「やっぱそうだろ笑」


ユーキが続ける。
「まぁ撮影から直でこれだしな」


シューヤが聞く。
「起こす?」



少しの沈黙。

タクヤの顔を見る。

力が抜けきっている。

リョウガが首を振る。
「いや、今はいいと思うぞ俺は」



タカシも頷く。
「寝かせとこ」

マサヒロが言う。
「スタッフさん呼んでくる」



その間も、誰も離れない。

カイがぽつりと言う。
「ほんと無茶するよなー」


ユーキが苦笑する。
「止めてもやるしな」


シューヤも小さく笑う。
「“いける”って言うから」

少しだけ空気が緩む。

その中で、リョウガが言う。
「でもさ」

全員の視線が集まる。

「やっぱこいつ最後まで、ちゃんといるんだよなー」



タカシが答える。
「確かになぁ」


カイも頷く。
「全部やってた」


シューヤが言う。
「リハなしであれはやばい」

短い肯定が重なる。


そのあと、少し沈黙。

ユーキが言う。
「起きたら言うか」

カイが聞く。
「何を?」

ユーキが笑う。
「ちゃんと休めって」

タカシが即座に返す。
「聞かんやろな笑」

小さく笑いが起きる。

その間も、全員の視線はタクヤに向いたまま。

眠っている。

呼吸は落ち着いている。

それでも、さっきの数秒が頭から離れない。


リョウガが小さく言う。
「……間に合ってよかったな」

誰も否定しない。

本当に、ほんの一瞬だった。

そのまま、誰も騒がずに、

静かにその場に残る。

囲むみたいに。

守るみたいに。

その数秒の重さだけが、

少し遅れて、全員に残っていた。




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(ちょっと疲れてそうだなとガルアワ見て思ったので描きたくなりました🙇🏼‍♀️ゆっくり休んで欲しい…🥹)

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