『……あの…』
青年が困惑気味に口を開いたのを見て、やっと半助たちも我に帰った。
「がっ、学園長ー!!!何を言い出すんですか突然!」
「そんなのあまりにも危険すぎます!」
「突然の思い付きにも許されることと許されないことが!」
「ここにいるのは私たちだけではないのですよ!?」
「もしこの方が言うように追っ手が襲撃してきたら、それこそ物凄い被害が!」
「私たちとてただではすまないでしょうし、下級生なんてひとたまりも…」
「ええーいうるさい!!!決めたといったら決めたんじゃー!!!」
半助や五年の面々の反対を押し切り学園長が声を張り上げる。
「考えてみぃ!」
学園長がカッと杖先を床に打ち付けた。
「お主らは既にこやつの里のことを聞いたのじゃぞ!例えそれが全てでなくとも、里について聞いたのじゃ!抜け忍を追うのは何故じゃ?こういった情報が流れるのを防ぐためじゃろうて!今更この者を外に出したところで、ここにこやつがいたことが知れれば居ても居なくとも同じことじゃ!」
『!』
学園長の言葉に、青年が顔を強張らせる。
『も、申し訳ない…私は結局巻き込んでしまった…』
「いや、こちらこそ、無理に色々と聞いてしまった…」
半助と頭を下げあう。
「そういうわけじゃから、こやつはここにいてもらう!聞いたとおり、数多の追っ手から逃げてきた強者じゃ。追っ手が来たときに我らが刃ともなろう」
『…し、かし…』
「ええい!何じゃ、行く宛でもあるのか?!」
『あ、ありません』
「じゃあ決まりじゃ!」
「…学園長がまともなことを…」
もう五年も半助もなにも言わない。
ただ青年だけが困惑した表情を見せ、曖昧に頷くのだった。
***
学園長が去ったあと、残された半助と五年、それから伊作と青年は微妙な空気の中にいた。
「えっと…ど、土井先生。この方はもう忍術学園の関係者ということで…いいんでしょうか…?」
伊作が伺うように半助をみる。
「…だろうなぁ…学園長が言うことも最もだし…。もう言い出したら、聞かないからな…」
もっとも、この後職員室で学園長がこの事を言い出せば大激論が交わされるのだろうが、学園長の言葉は絶対であるから、もうこの青年はそういうことなのだ、と半助は思う。
『…ほんとうに、いいんでしょうか。私は…控え目に言っても、この場で拷問やらにかけられて良いほど怪しいと思うのですが』
「学園長がいいっていってるからねぇ…。いいんじゃない、お兄さん」
尾浜勘右衛門が笑って布団の横に座る。
「ちょ、ちょっと勘ちゃん…!」
「いいっていいってー。雷蔵もほら」
勘右衛門が自分の横を示すので、不破雷蔵は戸惑いながらもそこに腰を下ろした。
「勘ちゃんは順応能力が高過ぎるのだ」
「それお前もだろ兵助…」
兵助と八左ヱ門も空いたスペースに腰を下ろす。
「…鉢屋は座らないの?」
伊作がにっこり笑って鉢屋三郎をみる。
「…座りますよ、座ればいいんでしょう!」
伊作の笑顔に何か黒いものを感じてか、三郎は雷蔵の横に無理矢理割り込んでやっと座った。
「えー、まずは自己紹介から。僕は五年い組学級委員長委員会の尾浜勘右衛門です」
「同じく五年い組火薬委員会委員長代理の久々知兵助です。好きなものは豆腐です」
「ほんと豆腐ばっかだなお前…。僕は五年ろ組生物委員会委員長代理、竹谷八左ヱ門です。獣遁術用の獣や虫を管理してます」
「あはは、二人とも何時も僕とか言わないくせに。えっと僕は五年ろ組図書委員会の不破雷蔵です。よろしくお願いします」
「…同じく五年ろ組学級委員長委員会、鉢屋三郎」
五年生全員が自己紹介し終わったところで、勘右衛門がにっこり口を開く。
「お兄さんの名前はなんですか?」
対して青年はこの状況に観念したのか、包帯の巻かれた右腕で身体を支えて方向転換すると、軽く頭を下げた。
『私の名は…あなた、です』
よろしくお願いします、と少し掠れた声が静かにこぼれた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。