前の話
一覧へ
次の話

第1話

友達なんかで
387
2023/09/20 10:00
リンリンの最期の数秒に視た記憶の話。
〈あてんしょん〉
・リンリンがマモルに想いを寄せてる。即ちマモリン。
・「アディショナルメモリー」の曲パロのつもり…だったけどほぼ要素皆無。
・ゲーム2話・漫画9話ネタバレ。ベースはゲーム。
ふわっ、とした感覚が身体中に伝わり、下から激しい風が吹き荒れる。
落ちている。
終わり、なんだ。
まだまだやりたいこと沢山あるのになあ。
もしかしたら、これは全部夢なのかもしれない。
実は夢で、起きたらベッドの上。
そんなのだったらいいのになあ。
シンタ
我がヒーロー戦隊のゴクヒニンム!今日はアマゾンまで来たぞ!
ワタル
来たぞー!
マドカ
近くの山ですけどね
或る日曜日、私達はシンタくんに連れられて近くの山まで来ていた。シンタくん曰く、何かの極秘任務らしいが特に私達は何も聞いていない。っていうかシンタくん自体も何か分かってないっぽい。
マモル
で、シンタくん。今日は何の任務をするんですか?
シンタ
えー…と…?うーん…あれ、あれだ!カブトムシを探すぞ!
マドカ
今秋の終わり頃ですけど
リンリン
幼虫さんならいるかもね
シンタ
ぐぅ…
ほら、シンタくんも分かってないらしい。
シンタ
そ、そうだ!探索してブラックに勝てる情報を探すぞ!
マドカ
ある訳無いじゃないですか…
シンタ
手分けして探すぞ!3時になったら此処でジョーホーコーカンだ!だから3時には此処に集まれ!
マモル
了解です!
マモルくんがそう言うから、私も「了解」とだけ言っておいた。
マモルくんは車椅子で、でこぼこした道は行けないから車椅子を押して緩やかな道を歩いた。
紅葉の葉は枯れかけだけど、十分美しかった。
マモル
リンリンくん、紅葉の花言葉は知っていますか?
リンリン
花言葉?うーん…知らない
マモル
紅葉の花言葉は「大切な思い出」や「美しい変化」等があるそうです
思えば、こういう何気ない日も大切な思い出ですよね
リンリン
ふふ、そうかも
確かにそうだよね。いつかおばあちゃんになって死んじゃう時が来たらこんなの覚えてないかもしれないけど…
リンリン
死んじゃう時にこの景色が走馬灯として見れたら、なんだか素敵だよね
マモル
確かにそうですね…
リンリン
…あ!
私は、向こう側にある「拾ってください」と書かれたダンボールを見つけた。
私が車椅子を離しそのダンボールへ向かおうとした瞬間…
リンリン
…えっ
床の抜ける感覚。落ちている。
リンリン
うわぁっ!
ドスッ、という音と共に私は尻もちをついた。
マモル
だ、大丈夫ですか!?
リンリン
いててて…あっ、手にかすり傷が……絆創膏…
マモル
この落とし穴、結構深いですね…上がれますか…?
リンリン
…無理かも。っていうかどうして落とし穴なんか作るのかなぁ…
絆創膏を貼っていると、頭に何かが当たった。
マモル
ロープです…!落ちてました…向こうの木に括り付けたんですけど、上がれますか?
リンリン
よ、よし…!
……そう意気込んで約数分後。
リンリン
む、無理だよこれ…!
斜面は急、壁は滑りやすい、しかも5歳の私は体力も身長も壊滅的…。
マモルくんに引っ張ってもらおうにも車椅子だから下手したら落ちてくる…八方塞がりだ………。
マモル
シンタくん達でも呼んで……いや、でもそしたらリンリンくんが心細いですよね…それに寒いですし…
リンリン
もうちょっと頑張ってみる…!
それに、3時を過ぎたらシンタくん達が探しに来るよ、きっと……あれ、空もうオレンジだね。日沈むの早くなってきたね
マモル
そうで…
途端に流れる愉快なメロディ。
リンリン
…え
このメロディは、毎日17時になると流れる音楽だ。
つまり…
リンリン
えっと…もう5時…?
マモル
た、体感が数分ですよ!?
リンリン
つーかなんでシンタくん達は来ないの!?
マモル
分かりません!!!
リンリン
あーっもう!!!
とりあえずこのイライラの行き場を手と脚に向け、この落とし穴を駆け上がった。
リンリン
…あ
マモル
リンリン
あ、上が、上がれちゃったよ!?
マモル
だ、だ、大丈夫、ですか!?
リンリン
私大丈夫!?
なんかいろいろ突飛すぎて混乱してしまう。その状況が可笑しいのは、マモルくんは笑った。
マモル
さあ、早くシンタくんと合流して帰りましょう!よく頑張りましたね、この長時間!お疲れさまです!
その笑顔に何かが芽生えたのは、この時だった。
そして、この走馬灯故にその気持ちの正体に気づけたのは、今だった。
涙が宙へ消えてゆく。
最後に、最後に最後に最期に。
リンリン
マモル、くん










リンリン
大好き、だよ……

プリ小説オーディオドラマ