リンリンの最期の数秒に視た記憶の話。
〈あてんしょん〉
・リンリンがマモルに想いを寄せてる。即ちマモリン。
・「アディショナルメモリー」の曲パロのつもり…だったけどほぼ要素皆無。
・ゲーム2話・漫画9話ネタバレ。ベースはゲーム。
ふわっ、とした感覚が身体中に伝わり、下から激しい風が吹き荒れる。
落ちている。
終わり、なんだ。
まだまだやりたいこと沢山あるのになあ。
もしかしたら、これは全部夢なのかもしれない。
実は夢で、起きたらベッドの上。
そんなのだったらいいのになあ。
或る日曜日、私達はシンタくんに連れられて近くの山まで来ていた。シンタくん曰く、何かの極秘任務らしいが特に私達は何も聞いていない。っていうかシンタくん自体も何か分かってないっぽい。
ほら、シンタくんも分かってないらしい。
マモルくんがそう言うから、私も「了解」とだけ言っておいた。
マモルくんは車椅子で、でこぼこした道は行けないから車椅子を押して緩やかな道を歩いた。
紅葉の葉は枯れかけだけど、十分美しかった。
確かにそうだよね。いつかおばあちゃんになって死んじゃう時が来たらこんなの覚えてないかもしれないけど…
私は、向こう側にある「拾ってください」と書かれたダンボールを見つけた。
私が車椅子を離しそのダンボールへ向かおうとした瞬間…
床の抜ける感覚。落ちている。
ドスッ、という音と共に私は尻もちをついた。
絆創膏を貼っていると、頭に何かが当たった。
……そう意気込んで約数分後。
斜面は急、壁は滑りやすい、しかも5歳の私は体力も身長も壊滅的…。
マモルくんに引っ張ってもらおうにも車椅子だから下手したら落ちてくる…八方塞がりだ………。
途端に流れる愉快なメロディ。
このメロディは、毎日17時になると流れる音楽だ。
つまり…
とりあえずこのイライラの行き場を手と脚に向け、この落とし穴を駆け上がった。
なんかいろいろ突飛すぎて混乱してしまう。その状況が可笑しいのは、マモルくんは笑った。
その笑顔に何かが芽生えたのは、この時だった。
そして、この走馬灯故にその気持ちの正体に気づけたのは、今だった。
涙が宙へ消えてゆく。
最後に、最後に最後に最期に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。