第11話

希望の見えない空の下で
53
2024/02/02 11:00
魔姫
魔姫
ふう、あいつらは意外と小賢しかったわね…
魔姫
魔姫
まあいちばん大事なことに気付けなかったみたいだけど
魔姫
魔姫
いちばん大切なものは、肌身離さず持ってるものなのよ…
スカートのポケットから鍵を取り出す
魔姫
魔姫
二人とも生きてるかしら
魔姫
魔姫
生きてるー?
局長
局長
…ああ
アサギ
アサギ
はい…
魔姫
魔姫
(やっぱり紫は弱ってるみたいね)
魔姫
魔姫
私はもう出るから残りの人生楽しんでねー!
数分後…
執事A
執事A
ご主人様から差し入れが届いた
執事B
執事B
ワインだ。四人で飲めと言われた…
アサギ
アサギ
四人で?
局長
局長
怪しい…
執事B
執事B
いや、飲まなきゃいけないらしい
アサギ
アサギ
なんで…
局長
局長
なんでなんだ!
魔姫
魔姫
あたくし、見てるわよ
局長
局長
ひっ!
魔姫
魔姫
あたくしに逆らうおつもりかしら?
アサギ
アサギ
い…いいえ…
執事二人がグラスにワインを注ぐ
局長
局長
(指先がだいぶ白くなってるな…)
魔姫
魔姫
ほら、乾杯しないの?
局長
局長
か、乾杯…
アサギ
アサギ
乾杯…
執事B
執事B
乾杯…
執事A
執事A
乾杯…
四人がワインを飲む
局長
局長
(…なんか変な味がするな…)
アサギ
アサギ
(嫌な予感がする…)
アサギ
アサギ
ゲホッゲホッ…
局長
局長
アサギ!大丈夫か?
局長
局長
(さっきのワインになんか変なのが入ってたんだ…)
魔姫
魔姫
ふふふ、あたくしにはすべてお見通しよ
魔姫
魔姫
あなた達が逃亡しようとしたことも
局長
局長
…!
アサギ
アサギ
…!
魔姫
魔姫
あなた達が裏切ろうとしたことも
執事A
執事A
っ…!
執事B
執事B
っ…!
四人がうつ伏せになる
局長
局長
く…苦しい
アサギ
アサギ
うう…う
執事A
執事A
息ができない…
執事B
執事B
なんで分かったんだ…
魔姫
魔姫
なんで?あたくしはあんた達の指先、ちゃんと見てたわよ?
根拠があるから言い訳できないわよ
執事A
執事A
うっ!何も言い返せない…
執事B
執事B
図星だ…
四人は、薄れゆく意識の中で、魔姫が不敵に笑ったのを見た。
四人の目が覚めて…
局長
局長
…アサギ!アサギ!
アサギ
アサギ
局長
局長
大丈夫か?
執事A
執事A
俺は大丈夫だけど
執事B
執事B
俺も大丈夫だけど…
そっちは?
局長
局長
二人とも大丈夫なのか。それは良かった。だがこっちは…
局長
局長
生きてるが、ギリギリというところだ
執事A
執事A
俺はお前のお陰で少しだが記憶を取り戻すことができた
執事B
執事B
まあその代償として、頭が痛いけどな
執事A
執事A
まあでもお前のおかげで、あの馬鹿な女とケリを付けることができそうだな
魔姫
魔姫
誰が馬鹿な女ですって?
局長
局長
は?お前のことだよ
魔姫
魔姫
もう一回言ってみなさい!
執事A
執事A
ああ。何度でも言ってやるさ
執事B
執事B
お前が馬鹿だってな!!
魔姫
魔姫
なんとでも言ってるといいけど、紫は?
局長
局長
お前に言う筋合いはない
魔姫
魔姫
…生きてるみたいね
魔姫
魔姫
こいつは薬が回るのが速いから死んでいるんじゃないかと思ったわ
執事A
執事A
お前、俺達に何した?
魔姫
魔姫
そんなの子供でもわかるわよ。なんで訊いたの?こっちが質問したいわ
執事B
執事B
何されたかは分かっている。なんの毒を盛ったか聞いてるんだ
魔姫
魔姫
なんの毒?それはこの館の庭に生えてるバラの棘よ
執事A
執事A
なっ…
局長
局長
どういうものなんだその棘ってものは
執事A
執事A
それを飲むと体の中に棘が生えたように苦しみ続けるんだ
魔姫
魔姫
そう。最近の花の色が薄まってきたからね。これを飲んで人が苦しめばあのお花たちは喜んで血のように真っ赤な花を咲かせるわ
局長
局長
ってことはあの花たちは…
魔姫
魔姫
もうすぐきれいな花を探せるわ
局長
局長
…おい!アサギ!
アサギ
アサギ
ゲホッ!ゴホッ…
局長
局長
これは?
執事A
執事A
う、うわあー!
執事B
執事B
血?
魔姫
魔姫
そう。もっと苦しむのよ
執事A
執事A
(俺達はどうすれば良いんだ…?)

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