第19話

普段は言えないI love you
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2024/01/09 11:00
Tatsuya side
深澤辰哉
ただいまぁ〜、あなた?
返事がない。

んん、なんでだ?
もう仕事も終わってるはずだし、いつもならおかえりっていいながら玄関まで来てくれるのに。
リビング入ってソファを見ると、最近買ったというお気に入りのサメの着ぐるみパジャマにくるまった彼女が、横になって眠っている。


膝の部分なのか、微妙に波打ってるかぁいいサメにじわじわとこみ上げる笑いをこらえながらも、彼女を抱き上げて寝室の扉を開ける。
あなた

ん…たっちゃん?

深澤辰哉
あ、起きた?おはよう。
あなた

おはよ…

ベッドに置こうとしたら、俺の服の胸元をぎゅっと掴んで阻止してくる腕の中のちっちゃいサメ。
バランスを崩して上に倒れこみそうになるのをぎりぎりで踏ん張ると、サメの口がかぱっと開いて眠そうな彼女が笑ってた。
深澤辰哉
っと…、危ないよ?
あなた

たっちゃんだぁ…

深澤辰哉
なに、酔ってんの?
あなた

違うよ?お酒飲んでない。

深澤辰哉
じゃあなに、どしたの?
寝起きだからなのか、お酒を飲んでないがウソなのかわからない、それでも甘々の彼女がとぉってもかぁいいんですけど!
ぎゅうっと抱き着いて離れない彼女をあやして、俺も隣に寝転ぶ。
あなた

あのね。

深澤辰哉
ん?
あなた

これからたっちゃん忙しくなるじゃない?

深澤辰哉
ん…、あぁ、そうね?
あなた

だから、充電。

深澤辰哉
そっか。
サメの口から顔だけを出して、おでこにキスをして満足そうに微笑む彼女。
まあもう嬉しそうな顔しちゃって。

普段は飄々としていて、あまりこういう姿を見ることがない分とっても貴重だ。
寝ぼけて時々抱っこして運んでとか言ってくるくらいだったからね。
深澤辰哉
寂しくなったの?
あなた

私ね、たっちゃんのことちゃんと好きだよ?

深澤辰哉
うん、あんがとね、あなた。
いつも信じて待っててくれて。
その返事をいつまで待てども来なくて、顔を覗き込むと眠っていた。
かぁいくて優しい寝顔をいつまでも見てたいけど、さすがにお風呂入らないのはね。
決意をして、離れてお風呂に向かった。

リビングにあったチョコレートの包み紙を見て、彼女の状況を思い出して合点がいった。
深澤辰哉
ほんと、かぁいいんだから…。
Girl Side


朝起きると、辰哉の顔が隣にあって、随分ぐっすりと眠ってるらしいその顔を横目に起き上がる。
あ、私これ着たまま寝ちゃったのか、って思ったけどよくよく考えるとソファで寝ていたはずでは?

あれ、なんでベッドで寝てるの?
あなた

やばい。なぁんにも覚えてない。

深澤辰哉
あなた~おはよ。
あなた

たっちゃん、おはよ。

後ろからがばっと抱きしめられて、ニヤニヤした顔で何かを言いたそう。
首だけ振り向いて、何?って言ったらしっかりと唇を奪われた。

なんかほんとに嬉しそう。
深澤辰哉
頭痛いんじゃない?
あなた

ん、若干…?

深澤辰哉
だろうね?
昨日ウィスキーボンボン食べたでしょ?
…、なんだって?
確かにチョコレート食べたけど、お酒入ってた…?
気づけないくらいにガードが甘くなってたってこと?

確かに昨日は、珍しくたっちゃんが忙しくなるなって思ったらちょ~~~っとだけ寂しいなとか思ったかもしれないけど。

でも、だからと言ってアルコールの危機管理が揺らぐほどのことじゃなかったはずなんだけどな!?
けど、今私の体に起こっているのは確実に、私がアルコールを摂取した時に起こる現象そのまんまで。
たっちゃんが言う《食べたチョコレートがウィスキーボンボンだった》が、一番信ぴょう性が高い。
あなた

やらかした…?

深澤辰哉
かぁいかったよ?
あなた

忘れてもらうことは?

深澤辰哉
ん~、無理かな?
にこにこと笑うたっちゃんが嬉しそうで…まあいいかと思う反面、私が酔っ払って何を言ってしまったのか本当に覚えていないのでわからない。

昨日の私何言ったの…。
降ってこい記憶…。
あなた

とりあえずたっちゃん、ドラマおめでとうだよ!

それだけ告げて逃げようとしても、男の人の力にかなうわけもなく。
あっさりと捕まって、また腕の中。
深澤辰哉
こ~ら、逃げないの!
あなた

ヤダ無理恥ずかしい…

深澤辰哉
嬉しかったんだから、素直な言葉が。
俺、頑張るよって頭にキスされて、なんか流されそうになってる。
何言ったか全くわかんないけど。
あなた

さ、寂しくならなくもないからさ?
たまには構ってよね。

深澤辰哉
俺、あなたが思ってる以上に、
あなたがいなきゃだめだからね?
あなた

なにそれ…

深澤辰哉
ほっとかないってこと。
耳元で告げられたそれに、不覚にもきゅんとした。
たまにはちゃんと伝えてみるのも悪くない…のかもしれない。

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