彼が照れ臭い笑みを抑えながら、真面目な顔でそう言った。
彼はいつも私が求める以上の幸福をくれる。
ローレンが、差し出した指輪を私の左手の薬指にはめた。
キラキラと輝くそれを、私はしばらくじっと見つめる。
瞼がじんわり熱くなるのを感じた。
私は指輪からローレンへと視線を移す。
ローレンとは婚約という形で同棲を始めた。
今はローレンの家で荷解きをしている。
以前彼から出した提案は本気だったらしい。
指輪も本当に嬉しかった。
所有の証か。
聞こえが悪いかもしれないが、彼にとっても私にとっても唯一無二なのだと周りに証明しているようで。
私は束縛されるのが好きなタイプなのかもしれない。
これも聞こえが悪いけれど。
好きな人に依存されるのは正直嬉しい。
ローレン”だから”嬉しい。
そんなことを考えていると荷解きも終わり、ローレンに名前を呼ばれる。
彼は手招きしながら、空いた左手でいつもの定位置を軽く叩いた。
私はいつも通り彼の股の間に腰かける。
すると彼はお互いの左手を重ね合わせて、薬指を嬉しそうに見つめながら呟いた。
はあ好き、とローレンが溜息を吐きながら俯く。
かと思えば突然、何かを思い出したかのように彼が顔を上げた。
自分から言い出したのに。
自虐に走られるとこっちも恥ずかしくなってしまう。
ローレンは面食らったような顔をする。
夫婦、という言葉が羞恥心を加速させたのだろう。
彼の顔は髪色に負けないくらい赤く染まっていた。
しばらく休載してました。(事後報告)
少しずつ連載再開していきます。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。