走った。
走って、走って、足がもつれそうになるくらい走った。
僕は病院へと向かって走っていた。
走りすぎて、今は少し息が苦しいけれど、
それでも走るのをやめることはできなかった。
なぜ僕に、病院へ行くこと。行かなきゃ行けなかったことを言ってくれなかったのか。
僕だけじゃなく、みんなにも言わなかった理由は何?
先生に聞いても、風邪とかそういうものじゃない。
ってことしか教えてくれなかった。
もし、重い病気とかだったら、、、
そう思うと僕は、いてもたってもいられなくなって、、
気づけば僕は、病院についていた。
病院に入ろうとした、その時だった。
どうしてここに、、と言ったような顔で、僕の名前を呼んだ君は、病院の外のベンチに1人、座っていた。
僕はゆっくりと呼吸を整えながら座っていたるぅとくんを見つめた。
と、るぅとくんは笑った。
目元は少し赤くなっていた。さっきまで泣いていたんだろうか。
笑っていても、心の底から笑っているような感じではなくて、最近見ている、"あの"笑顔だった。
______『ころんの言う大切な人と、ころんの関係を少し不安に感じてるんじゃないか?』
ふと、さとみくんの言った言葉が蘇った。
不安に感じている。確かにそれは合ってる。
でも、それと同じくらい僕は、るぅとくんのことをもっと知りたいと思ってる。
どんなことを言われたって、僕がるぅとくんの隠している真実をわかるまで引き下がる訳には行かない。
自分が思っているよりも大きな声が出て、自分でも少し驚いた。
幸い、病院の外には僕とるぅとくんしかいなかった。
るぅとくんは驚いて目を見開いている。
自分ばっかりな意見で嫌われるかもしれない。
でも、もう止められなかった
るぅとくんは、驚いたような、困ったような複雑な顔になっていた。
目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
僕は悔しかったんだ。
困っている人が近くにいるのに助けてあげられないことが。笑顔にしてあげられないことが。
るぅとくんは僕の目の前に来て、僕の言葉を聞いて、辛そうに言った。
僕は泣いた顔のまま、ぱっと顔をあげた。
るぅとくんは優しく喋りかけて、僕を案内してくれた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。