こんな、何気ない会話で、俺の恋は終わった。
本当は、るぅとと付き合うより、俺と付き合った方が幸せになれる。
なんて、くそみたいなことを吐きそうになった。
さっきまで、隣には好きな人がいたベンチに、俺は1人で座ったままだった。
こんなに本気で、誰かを好きになったのは初めてだった。
曲がり角でぶつかるとか、少女漫画みたいな出会い方だったけど、俺を不思議そうに見つめるころんを見て、俺の心は張り裂けそうなほど苦しくなった。
クラスに入って、ころんを見た時は、正直運命かとも思った。
一目惚れしたやつが、同じクラス。
それだけで俺の気持ちは舞い上がって、自己紹介途中にころんのとこに駆け寄って話した。
恋愛のこととか普段の生活のことでからかって怒った時の表情とか…冗談なのに本気で信じて、そうなんだ!ってキラキラした目で俺を見つめる"あいつ"は 可愛すぎてたまらなくて………
泣くな。今辛いのは俺よりもころんだろうが。
なんて、振られた相手のことをまだ考えて自分に言い聞かせないと、溢れるものが止まらなそうになかった。
俺は、好きな人の幸せが自分の幸せだから。
とか、綺麗事を吐く人間じゃない。
だけど…
あいつには敵わない。
俺という人格を変えて、去っていった。
それでも恨んだり、憎んだりはできない。
だって楽しかったんだ。あいつを好きだった時間は。
あいつを好きになって、初めて身なりを気にするようになったし、つけてる香水も変えて。
充実していた。俺が生きてきた中で1番。
"俺"を変えてくれた。
あいつのおかけで、俺は変われたんだ。
誰かを好きになって努力することを。
恋した時の楽しさを。
好きな人の幸せを願ってしまうことを。
どれも自分に大切なことで、足りない部分だったから、ころんには感謝してる。
してるのに…
胸が苦しい。痛い。
辛いのに変わりはなかった。
こんなに好きだったのかと、自分に呆れた。
…そういえば、今日夜から雨の予報だったか…
まぁ…正直どうでもいい。
雨に濡れても、何も感じない。
顔をあげると、びしょ濡れになっている俺を驚いたように見つめた莉犬が立っていた。
振られたなんて言えない。
カッコ悪すぎる。
莉犬は自分のさしていた傘を俺に差し出した。
俺を強引に立たせて莉犬は自分の傘に俺を招き入れた。
そう言われた途端、涙が溢れた。
今まで我慢してたのを全て出すかのように、止まらなかった。
そんな俺の背中を擦りながら、莉犬は頑張ったね。と、慰めてくれた。
俺と莉犬は、2人で寮の中へ入った。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。