俺は恋をしていた
恋している相手は他校の若旅 夏希ってやつだ
明るくて 面白くて
好きだった
小六の時 俺が受験をして他校に行ってからは
会う機会も減ってしまっていた
だから時々会えるのがほんとに嬉しかった
まぁその度 俺の体は 動かなくなってきているけど
あの時
そう 紅葉が綺麗に色付き始めた頃
夏希が
あることを言った
しかも涙混じりに
『 私さー 好きな人出来たんだ』
と
ショックだった
でも追い打ちをかけるように
『 人形病も薬じゃそろそろ効かなくなってきたや』
と
その時 夏希は泣いていた
その泣き顔は 愛おしくて 美しかった
その夜 俺は 泣いた
泣いて泣いて泣いた
次の日 目が腫れて友達に心配されたが
それでも 友達には何も言わなかった
言いたくなかった
夏希に思いを伝えられたらいいのにな.......
まぁ出来るはずもない
しかもあいつも 好きな人いるし
夏希の好きな人が いなければな
なんて変なことまで思ってしまったりした
でも夏希のあの事を聞いて
何故か俺は夏希がもっと好きになったし
守ってやりたくなった.......
自分の命が尽きるまで
いや
人形になってでも守りたかった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。