…夕暮れ
婚約者と同棲しているアパートで
…4年付き合った男に、フラれた
数時間前
いつものように、上司であり、
中学からの同級生である灰君を睨む
灰君にほんの少しの
違和感を覚えながらも
帰路に着く
今日は、婚約者の邦仁君と付き合ってから
4回目の彼の誕生日。
一般人の彼は、高校からの同級生で
スパイとしての人生を隠したとしても
傍で…生きやすいと思えた人
結婚したら…スパイから足を洗う
そう、誓えたような人
だった、のに…
リビングに居なくて、
寝室に居るのかと思って
開いた先に……知らない女の人と
抱き合っている邦仁君がいた
…機密を含まない物を選別して
在宅ワーク用に持ち帰った
書類が、袋ごと床に落ちる
「一応」…彼女?
……昨日も、一緒に眠ったベッド
同棲を決めた時に、
一緒に選んで、組み立てて…
そんな、思い出の詰まった家が
今は…知らない人の家のように思えた
この家にあるものは、形式的なもの
スパイ任務が多く、狙われやすい
私は、貴重品や個人情報書類を
灰君の好意に甘えて、スパイ協会の
会長用金庫に収めてある
服や化粧品も、うちで使うものより
手馴れている物が協会にある
元より趣味はないし
思い入れのものも、もう「無くなった」
スパイとして、そのくらい朝飯前だ
…保証人になってくれた、
灰君には申し訳ないけど
書類を拾い上げて、
今夜分の食事を冷蔵庫から拝借して
…来た道を、戻る












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。