第11話

アネモネ
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2025/04/03 13:24 更新


花に例えるなら彼はアネモネのような人だった。

儚く、でもそれ以上に美しく優雅に風に揺れている。



俺はそんな彼が大好きだった。
勿論恋愛対象として。


でももう君の視線の先には違う人がいて。


俺の気持ちに関係なく仕事は降り注いでくるから、

この気持ちにはうまく蓋をした。





つもりだった。













ある日彼と二人の仕事があった。



俺は前の仕事がまきで終わったから、早めに楽屋に着いていた。



しばらく本を読んでいると乱暴に扉が開いた。



そこには花束を持った、彼がたっていた。


泣き腫らしたような目をして。



『どうしたの…そんな、目・・・大丈夫?』

「ほッ、北斗ッ…グスッ気にしないでッ…」

『え、あ、いや、気にしないのは無理だけど…どうしたのか聞いてもいい?』

「グスッ、北斗ぉ…ポロポロ」



京本はそう言うと崩れ落ちるように座り、泣き出した。

彼の手からは花束が落ちて、花びらが何枚か散った。


そして彼はようやく話し始めた。



「北斗だから言うけどッ、俺と樹、付き合ってたの…でもさっき別れたの。振られたのッ‼︎なんでッ⁉︎俺はッ、俺はいつも樹のことだけ考えてッ、樹に尽くしてきたのにぃッ…ねぇなんでッ、なんでぇぇ…‼︎‼︎」



ああ。

やっぱり彼の中には樹しかいないんだ。



俺にとっては好都合だったから彼を抱きしめる。




彼にとって都合のいい男でいいからさ、嘘でもいいからさ、


俺のこと好きになってよ。




なんて言えない。



『でもね、京本。一ついいこと教えてあげる。』



そう言って俺は彼が落とした花束を、アネモネの花束を拾い上げた。



『アネモネの花言葉ってね、"君を愛す"っていうんだよ。だから大丈夫。樹も京本のこと、愛してたと思うよ。』



でもね京本、アネモネの花言葉はもう一つあるんだよ。

「捨てられた悲しみ」っていう花言葉がね。

俺は意地悪だから教えてあげないけど。

君にはアネモネが似合っているよ。

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