本当は、大丈夫なんか、
全くの嘘だ。
辛い、寂しい…
“ママ”って呼ぶのは、
もう無理なんだ…
これも嘘だ。
泣かないというより
泣けないんだ。
今、ここで私が泣いたら、
優斗は、もっと悲しんでしまう。
雄一の弟なんだから、
悲しませたくない。
だって、昔から、
確かに優斗は、両親から、
愛されてた。
私とは違って、
色んな物を買ってもらって、
遊んでもらって、
出かけたりしてた。
それに…
褒めてもらったり、
時には怒られたり…
私は、怒られていることさえも、
羨ましかった。
確かに、時には、
恨みたくなる時も、多々あった。
でも、よく考えたら、
優斗は何も悪くないんだ。
お母様とお父様の言うことを、
ただ、お利口にきいていただけ。
もしかしたら、優斗は、
私の存在すら、
知らなかったのかもしれない。
だったら、優斗は、
何も関係ない。
問題は、お父様だ…
隣の部屋に行くと、
そこにお父様は居て、
既に目を覚ましていた。
そして、近ずいた。
私は、少ししか怪我のしていない、
父親の、胸元を掴んだ。
プツン
私の、何かが切れた音がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。