「 ううん、
しょーちゃんのことは
僕だって心配してるからさ 」
帰宅後、
俺はなるべく自然に話をふる。
そういえば、
ほとけが文字を書くスピード、
かなり早くなったな、なんて思う。
字ももしかしたら
上手くなったかもしれない。
「 …なに? 」
そう問うほとけの様子は
字だけでもわかるくらい怪訝そう。
空気が、
変わった音がした。
ほとけの息を飲む音が、
聞こえないはずなのに、
確かに聞こえたんだ。
目を見開く、
彼の顔までもが脳裏に色彩を持って浮かぶ。
彼がおずおずと
ボールペンを動かすまでの間に
時計の一番細い針が、
ちょうど一周した。
「 そっか、
でも間違ってるかもしれないよ? 」
「 うん、どうしたの? 」
ほとけの握るボールペンが、
微かに震える。
そんなに怖いのか、
知られるのが。
それは 、… …
彼を心配しているから?
ボールペンが、落下した。
問いかけた後、
すぐにそれは拾われた。
でも見えない手元は
まだおぼつかなく見えた。
… …動揺しているのだ。
俺の質問の意味を理解して。
つまり、
俺がたどり着いた答えは、きっと。
「 なんでって、
僕が死んでからずっと … …
しょーちゃんあんな感じじゃん?
僕のこと、気にしてくれてるんだよ 、 」
初めて幽霊のほとけと話したときよりも、
書くのが長いと感じたのは
単純に文章が長かったからではないのだろう。
逃がさない。
そんな心持ちで、
鋭く君を見つめる。
君の書く字は
どんどん小さくなっていく。
「 なんで、そんなふうに 」
またほとけは、
しばらく固まった。
まさかこの段階で成仏なんか
していないだろうから、
ほとけが言葉を綴るまで
とにかく俺は待っていた。
やがてその、
見えない手が動かされる。
「 さすがだね、いふくん 」
彼は、自身が隠していた事実を、
やっと認めた。
その一言から、
せきを切ったかのように、
ほとけの言葉は
素早く綴られた。
「 しょーちゃんに傷ついて
欲しくないって思って、
ほんとのこと知られたくなかった 」
早口で話した後、
一度息を大きく吸うのと同じように、
ボールペンが宙で固まる。
しかし、
すぐにまた紙面へと戻っていく。
ほとけの言葉はまだまだ終わらない。
「 でも、気づいていたの
このままじゃ しょーちゃんを
本当の意味で救うことはできない
だからいふくんには 答えを伝えなきゃって 」
「 しょーちゃんの前みたいな
笑顔が見れないと僕は 」
「 ずっと ゆうれいのまま だって 」
そこでようやく気がついた。
ほとけの未練は、
しょにだの笑顔を見ること。
だから、
ほとけの未練を晴らすためにも
早くみんなにほとけが死んだ理由を
俺なりに伝えないといけない。
しょにだは確かに
怯えるだろう。
だけど俺らがいるから。
今度こそは。
そう思い、
明日にでも会議を開いてもらうために
ないこに連絡を __ しようとした。
それでも出来ずに止まったのは、
前から紙切れが投げつけられたからだ。
ほとけが投げた、ということか?
その中身を見る。
「 まって 」
その筆跡は荒れていて、
彼が焦りながら書いたのだと伝わる。
目の前でせわしなく
ボールペンが動く様を見る。
最近は字を書くのが早くなってきていた
彼だけど、
その中でもこれまでの比にもならないくらい、
素早く必死な動きだった。
そしてその文章が完成したとき、
俺は初めてほとけが急に
遊園地になんて行きたがったわけを知った。
悟らされてしまった。
「 あと一日だけ僕の未練を晴らさないで 」
「 まだ僕をここに居させて 」
「 ここで生きさせて 」
当たり前だ。
どうしてそんなことに気がつかなかったのだろう。
ほとけが死んだ理由は看破したというのに。
ほとけだって
本当はずっと、死にたくなんてなかったんだ。
消えてしまうのなんて、
怖いことでしかなかったんだ。
すぐにでも成仏を、なんてしたいわけない。
まだ彼はこの世に、居たかったんだ。
最終話 近づいてきました!!!!!
そろそろ トリックが解ける人もいるかも … 👉👈











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!