第10話

突きつける様な悲しみ
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2023/08/09 02:00 更新
相変わらず今日も私は兵隊さんを看護していた。

段々と兵隊さんが腕を切断して蛆虫が沸いても、足を麻酔なしで切断してもなんとも思わなくなった。

慣れてきたのかしら、それとも冷静に対応出来るようになったのか…、それともこちらが麻痺してきてるのか、自分でもよくわからなかった。

その時だった。
兵士
…すいません、宮本カナ様はで居ますか?
防空壕の中からひょこりと顔を覗かしているこの人は見るからに陸軍の兵隊さんだった。
速水先生
なんだ、用なら早く済ましてくれ。
今は何もかも足りないんだ。用事を終えたら早く出て行ってくれ。
速水先生が八つ当たりする様な口調で言う。
そりゃそうだよね。何もかも足りないし、負傷者は増えていくばっかり。
イライラする気持ちもよく分かるわ。

取り敢えず私は看護してる兵隊さんを他の子に任せて出て行った。















見るからに大人の身長で見るからに体が大きい。
私は恐る恐る聞いた。
あの、何か御用ですか…?
兵士
…っ!これを!!
何か突き出された。
…何かの、手紙ね。
兵士
すいません!!では!!
そそくさに兵士は走って逃げる様に行った。
顔がとても辛そうに渡していたのが印象的だった。
…中には何が入ってるのかしら?

私は気になって仕方がなかったので手紙を開くことにした。
…え、
……文、あき、さんの、手、紙…?
私の想い人の綾瀬文昭さんからの手紙だった。

文明さんと私は最初こそなんとも思ってなかったけど彼の見せる皆をこのご時世なのに明るくさせて優しい目で見てくれる所に惚れたのだ。

恵理子も応援してくれていたの。

でも、文明さんは赤紙が届いて戦地に行かなくてはならなかった。
最後に会ったのは去年の冬だった。肌寒い、雪の積もった日だった。

あの時、「君に幸あれ」と言う手紙とお守りを残して彼は去ってしまった。ひめゆり学徒隊も彼が去った頃にできたのだ。

……こ、これ、“遺書”じゃない?
あの兵隊さんの態度とこの封筒、まさかとは思って手紙を見た。




見事に私の予想と感は的中。遺書だった。
…嘘でしょ?ねえ、嘘って言ってよ!文昭さん!!
そんな訳ない、そんな訳ないと自分に言い聞かせてた。
でも明らかに遺書だった。

現実はいつだって残酷だ。それも人間っていうのは“当たり前の幸せ”っていうのも気づくのはいつも何もかも失った時よ。
つくづく思う。今のこのご時世で考えたらあの時普通に授業がしたいとぼやいてた自分を一発ぶん殴りたくなるわ。贅沢言うなってね。

…それなのに、どうしてこんなに胸が痛いのかしら、何故こんなにも涙が出てくるのかしら。


…あぁ、泣きやめ、泣きやめ!私!!
しっかり、しろ!現実はどうもがいても変わらないわ!父さんが死んだって涙に暮れる毎日を送ったとしても変わらないのよ…!!
うわああああん!!
文昭さん!!文昭さん!!
いやああああ!!文昭さん!!
死なないで!!
私は泣いた。泣いて、泣いて、叫んだ。
途中で恵理子と先生とその他の子達に慰めてもらった。
恵理子に至ってはずっと付きっきりで背中をささってくれた。
「私がいるから…!!大丈夫…!!」
私はまた甘えることしかできなかった。
恵理子に抱きしめられるがまま、恵理子の肩に顔を乗せて泣いた。

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