第2話

13
2023/06/20 10:00
その少年はビルの屋上に感情なんてものをすてた顔で立っていた

だがフェンスの外側に少年がいる

そう少年はここから飛び降りるのだ
もう一人の少年
なぜ死ぬの
もう一人の"僕″が言った
少年
お前のせいだよ
そうだそうだ全部お前のせいなんだよ
もう一人の少年
それが全部僕のせいなら君のせいでもあるよね
たしかにそうかもしれない

僕が生まれたからこうなったのかもしれない

僕が生まれたからこいつも生まれたんだ

こいつが生まれるなら僕はどうなってもよかった…と今は思ってしまう
もう一人の少年
僕は君のために生まれてきたんだよ?すこしは感謝しなよ
そうだ僕がこんなんだから生まれてきてくれたんだよな___
僕は昔から友達ができなかった

静かでおとなしくて恥ずかしがり屋で

人と話すのが苦手だった

人が嫌いだった

理由はわからない

それで僕は生きている意味がないと思った

生きていることが楽しくなかった

そんな時
もう一人の少年
ねえ。君。僕と友達にならない?
お前が生まれたんだよな
少年
え?!
初めは嬉しかったよ

友達ができたんだし

それに生まれてはじめて心の底から喜んだんだし

でもさ
クラスメイト
お前いつも誰と話してんだよ
クラスメイト
きもちわる
クラスメイト
気色悪い近づいてくんな
少年
え…
みんなにはもう1人の僕が見えないらしい

だから1人で喋ってるように見える

それならまだよかった

友達が励ましてくれたんだから

でも…
いじめがそこから起きた
ただ一つ普通と違うと誰もが攻めてくる

日頃のストレスをすべて僕にぶつけてくる

誰にも何も言われなかった頃の方が楽だった

いじめられる方が辛かった

僕はただ友達が欲しかっただけなのに___

だから僕は今日飛び降りるんだ
夕立だ…

そろそろ旅立とう…

どこに行くかなんてわかんないけど

今生きてる方が辛いと思う
もう一人の少年
何してるんだ
僕は姿勢を正した
少年
じゃあね。もう1人の僕。僕がいなくなればお前もいなくなるんだよね。お前なんていなくていいよ。楽になってね
さようなら最悪な友達

もうお前に会いたくないよ
下ではいろんな人たちが僕のことで騒いでいた

「大丈夫なの?あの子」

「何してようとしてるの?」

そんなの関係ない

少年は先のない道に一歩踏み出した
"これで僕は楽になれる"
もう一人の少年
…w
もう1人の少年は仮面を外し笑みを浮かべた
もう一人の少年
さて。次は誰の"もう1人"になるかな
もう1人の少年は仮面を外しその辺に投げ捨てた

その仮面にもう用はない

その者はまた違う仮面を取り付けるのであった
もう一人の少年
人間はこれだから面白い

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