その少年は生と死の境にいた
生きてる時の記憶はないしここに来た記憶もない
遮断機の前で竿が上がるのを待っていた
頭に鐘の音がカンカンと鳴り響く
別にどこに行こうとしてるわけでもない
進む道がそこにしかないのだ
竿はずっと上がらない
時間も経っている気がしない
ずっと夕方のまま
少年はぼーっと突っ立っていた
すると後ろから無数の手が少年を掴んだ
「行く…な…こっ…ちに…来い」
少年は怖くなり。その手を払いのけ遮断機の中へと踏み出した。
両側から電車が少年に突っ込み少年は死んだ
これは少年の選択だ。
少年は自ら救いの手を振り解いたのだから。
これは少年の選択だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!